進行中の治験

悪性神経膠腫患者に対するベバシズマブ発現型抗がんヘルペスウイルス(T-BV)を用いた第Ⅰ相臨床試験(医療専門家向け)

ウイルス療法とは ウイルスを腫瘍細胞に感染させ、ウイルスの直接的な殺細胞作用により腫瘍の治癒を図る治療法である。腫瘍細胞特異的なウイルス複製が得られるようにウイルスゲノムに人為的な変異を加える。遺伝子組換えウイルスは、腫瘍細胞に感染すると複製し、その過程で宿主となった腫瘍細胞は死滅する。増えたウイルスは拡散して周囲の腫瘍細胞に感染し、ウイルス複製→細胞死→感染を繰り返して腫瘍細胞を破壊する。正常細胞ではウイルス複製ができないため、正常組織は傷害しない。
T-BVとは
三重変異を有する遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)
東京大学で開発し、2021年に製造販売承認された第三世代がん治療用HSV-1である G47Δ (teserpaturev)を基本骨格とする改良型ウイルス
ヒトVEGFに対する中和抗体であるベバシズマブの遺伝子が組み込まれており、腫瘍細胞内でウイルスが複製する過程で腫瘍局所においてベバシズマブが発現するよう設計されている
ウイルス療法による直接的な腫瘍細胞破壊作用に加え、腫瘍局所での血管透過性亢進や腫瘍腫脹を抑制する作用が期待される
T-BVのDNA構造:三重変異とベバシズマブ遺伝子の組込み
T-BVのDNA構造:三重変異とベバシズマブ遺伝子の組込み
臨床試験の概要
目的 初期治療後に再増大した膠芽腫(IDH1 wild type)およびGrade 4星細胞腫の患者を対象として、抗ヒトVEGF抗体発現型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス1型T-BVの腫瘍内反復投与の安全性の評価
デザイン 第Ⅰ相、単アーム
対象疾患 初期治療後に再増大した膠芽腫(IDH1 wild type)およびGrade 4星細胞腫(テモゾロミド治療後の再増大を対象とするが、登録時にテモゾロミドを継続している患者は、希望すればテモゾロミド継続可)
投与方法 定位的に腫瘍内にT-BV(1×109 pfu)を投与する。1回あたり腫瘍内の最大2カ所に分割投与。5-14日以内に2回の投与を行う。
評価項目 主要評価項目:安全性の評価(有害事象の種類と発生頻度の調査)
副次評価項目:全生存期間、無増悪生存期間、画像上の腫瘍変化
被験者数 6名(最大12名)
(用量制限毒性が1/3の症例で見られた場合3例追加。1/3を超えた場合は試験中止)
観察期間 最終投与後90日
募集予定期間 2026年3月〜

主な選択基準

  • 病理診断が確定している膠芽腫(IDH1 wild type)およびGrade 4星細胞腫
  • 初期標準治療(放射線治療+テモゾロミド)が終了している(テモゾロミドの維持療法は継続中でもよい)
  • 18歳以上、造影MRIで径1cm以上の造影病変が描出される
  • KPS60%以上

選択基準の詳細

適格基準

初期治療後に再発または再増大した悪性神経膠腫患者で、以下の基準をすべて満たす患者

  1. 組織学的に診断が確定しており、膠芽腫(IDH-wildtype)またはグレード4星細胞腫(IDH-mutant)と診断されている。
  2. 初回治療として、手術、放射線治療およびテモゾロミドによる標準治療を受けた後に、腫瘍の再発または再増大が認められる。
  3. 造影MRI検査により、最大径10 mm以上の造影効果を有する腫瘍病変が1病変認められる。
  4. 腫瘍は単発病変であり、脳室、脳幹、後頭蓋窩に存在せず、脳室経由で治験薬投与を要しない。
  5. 理学的所見および画像検査により、腫瘍の局在、大きさおよび進展範囲が十分に評価されている。
  6. 同意取得時の年齢が18歳以上(性別は不問)。
  7. Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)の Performance Status が0〜2。
  8. 適格性判定日前1週間以内のステロイド投与量が安定している。
  9. 前治療(他の治験薬、研究的治療、ベバシズマブ投与、脳腫瘍切除術)が終了してから30日以上経過している。
  10. 3か月以上の生存が見込まれる。
  11. 治験薬投与開始前28日以内の血液検査において、以下をすべて満たす。
    • 骨髄機能
      • 白血球数:2,000/mm3以上
      • 好中球数:1,000/mm3以上
      • 血小板数:100,000/mm3以上
      • ヘモグロビン:9.0 g/dL以上
      • PT-INR:施設基準値上限の1.3倍以内
    • 肝機能
      • ASTおよびALT:施設基準値上限の4倍以下
      • 総ビリルビン:2.5 mg/dL以下
      • 直接ビリルビン:1.5 mg/dL以下
    • 腎機能
      • 血清クレアチニン:1.7 mg/dL以下

除外規準

たとえ選択基準を満たしていても、以下のいずれかに該当する患者は本試験の対象から除外する。

  1. 脳外転移が認められる患者。
  2. 2か所以上の脳内病変を有する患者。
  3. 脳室、脳幹、後頭蓋窩に存在する腫瘍、または脳室経由で治験薬投与を要する腫瘍を有する患者。
  4. くも膜下播種を認める患者。
  5. 予測される生存期間が3か月未満と判断される患者。
  6. 妊娠中または授乳中の女性。
  7. 本治験期間中および治験薬最終投与後6か月間、バリア型避妊を実施する意思がない患者。
  8. 活動性の感染症を合併しており、治験薬投与や手術の実施が困難と判断される患者。
  9. ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染が確認されている、または過去に陽性であった患者。
  10. 活動性のヘルペスウイルス感染を有する患者、または抗ヘルペスウイルス薬による治療を要する状態の患者。
  11. アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、ビダラビン、アメナメビル等の抗ヘルペスウイルス薬に対するアレルギー反応の既往がある患者。
  12. コントロール不良または重度の合併症(心不全、糖尿病、高血圧、間質性肺炎、腎不全、自己免疫疾患等)を有する患者。
  13. 治験薬投与前30日以内に、以下のいずれかを受けた患者。
    • 他の治験薬または研究的治療
    • 脳腫瘍切除術
    • ベバシズマブ投与
  14. 遺伝子治療または本治験薬以外のがん治療用ウイルス療法の治療歴を有する患者。
  15. MRI検査が施行できない患者。
  16. その他、治験責任医師または治験分担医師が不適格と判断した患者。

問い合わせフォーム

Page Top