進行中の臨床研究

進行性悪性胸膜中皮腫患者に対する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスG47Δを用いたウイルス療法の臨床研究の概要(医療専門家向け)

ウイルス療法とは がん治療用ウイルスを腫瘍細胞に感染させ、ウイルスの直接的な殺細胞効果によりがんの治癒を図る治療法である。ウイルスゲノムに人為的な変異を加えたがん治療用ウイルスは腫瘍細胞に感染するとその中で複製し、その過程で感染した腫瘍細胞を死滅させる。一方、がん治療用ウイルスは人為的な変異によりウイルスの複製に関して高い腫瘍特異性を示すため、正常組織が傷害されることはない。そして複製して増えたウイルスは細胞外に拡散して周囲の腫瘍細胞に再び感染し、ウイルス複製→細胞死→感染を繰り返して次々に腫瘍細胞を破壊していく。
G47Δとは
三重変異を有し、より一層の安全性と抗腫瘍免疫細胞に対する刺激を強めた第三世代の遺伝子組換えヒト単純ヘルペスウイルスI型 (HSV-1)。
米国で臨床試験が行われ、安全性が示されている第二世代HSV-1(G207)の改良型。
東京大学で膠芽腫を対象とした第I-II相臨床研究が終了し、現在第II相臨床試験(医師
主導治験)が進行中。
東京大学で嗅神経芽細胞腫および前立腺癌対象の臨床研究が行われ、うち嗅神経芽細胞腫が進行中。
臨床試験の概要
対象疾患: 進行性悪性胸膜中皮腫
試験デザイン: 非治験。単一用量。
投与方法: 胸腔内投与。4週間毎に最大6回まで繰り返し投与可能。
予定症例数: 6例。
エンドポイント: 安全性と治療効果の評価。
評価期間: 最終回投与後3カ月間。
試験開始時期: 平成30年6月中旬。
主な選択基準 ・病理診断が確定している悪性胸膜中皮腫。
・根治術未施行で手術適応のない再発または進行性の悪性胸膜中皮腫であること。(放射線療法および化学療法の有無は問わない)
・20歳以上、PS0〜1。

 

選択基準の詳細情報

適格基準

1) 病理学的に診断が確定していること。(病理組織型(上皮型、二相型、肉腫型)および病期は問わない)
2) 手術適応のない再発または進行性の悪性胸膜中皮腫であること。胸部造影CTにて評価病変があること。
3) 根治術未施行であること。(放射線療法および化学療法歴の有無は問わない)
4) 年齢20歳以上。
5) PSが0〜1で、胸腔内投与が可能であること。
6) 化学療法等の前治療から4週間以上経過していること。
7) 試験薬投与後少なくとも6か月間はバリア型避妊を実施できること。
8) 3カ月以上の生存が見込まれること。
9) 主要臓器の機能が正常であること。

除外基準

1) 既往歴
HIV陽性又は陽性の既往
CT検査(造影剤使用)が禁忌の場合。例えば、CT造影剤アレルギー、高度腎機能障害。
2) 腫瘍の存在 ① 胸腔内に試験薬を安全に投与できる部位がない場合。
3)臨床検査値
白血球 ≦ 2.0 x 103/mm3、好中球 ≦1.0 x 103/mm3、血小板 ≦ 60,000/mm3、ヘモグロビン量≦9.0 gm/dl、プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)>施設基準上限の1.3倍。
血清クレアチニン≧ 1.7mg/dl。
肝トランスアミナーゼ (AST 及びALT)> 施設基準上限の4倍。
直接ビリルビン > 1.5mg/dl。
4) 併存疾患
活動性のヘルペスウイルス感染の存在。
治験開始時に、抗ヘルペスウイルス薬(アシクロビルまたはバラシクロビル等)の治療を必要とする場合。
活動性でコントロールされていない感染症の存在。
3カ月以内の心筋梗塞。
コントロール不良または重度の心不全・狭心症・糖尿病・高血圧・間質性肺炎・腎不全・自己免疫疾患など。
アルコール又は他の薬物中毒
活動性の重複がん(同時性重複がん、無病期間が5年以内の異時性重複がん)。
5) アレルギー歴 ① 抗ヘルペスウイルス薬に対するアレルギー歴。
6) 併用薬、併用療法 ① 他の治験薬又は研究的治療(本試験薬投与前30日以内)
② 遺伝子治療又は本治験薬以外のウイルス療法
7) 妊娠に関する事項 ① 妊娠中または授乳中の女性。
8)その他 ① その他、担当医師が不適切と判断する場合。

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