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Epstein-Barrウイルス再活性化とネオセルフ:新たな自己免疫疾患発症機構

学友会セミナー

開催情報

開催日時 2025 年 8 月 5 日(火)16:00 ~ 17:00
開催場所 ハイブリッド開催(1号館講堂・Zoom)
講師 荒瀬 尚
所属・職名 大阪大学 微生物病研究所 免疫学フロンティア研究センター 免疫化学分野・教授
演題 Epstein-Barrウイルス再活性化とネオセルフ:新たな自己免疫疾患発症機構
世話人 〇主たる世話人:川口 寧(ウイルス病態制御分野)
    世話人:河岡 義裕(ウイルス感染部門)
 
備考 本セミナーは文部科学省共同利用・共同研究拠点「感染症研究教育拠点連合」における第1回JUPITRE教育プログラムの一環である。


【Zoom情報】
Zoom URL:https://u-tokyo-ac-jp.zoom.us/j/88636903706?pwd=YEvzXQBHLbxGM7BCAfEE8F7CuwGSL5.1
ミーティング ID: 886 3690 3706
パスコード: 777594

 

概要

自己免疫疾患において、なぜ特定の自己抗原への免疫応答が惹起されるのか、なぜ特定のMHCクラスIIアリルが最強の疾患感受性遺伝子となるのか、そしてウイルス感染がいかにして発症の引き金となるのか。これらは長らく免疫学における大きな謎であった。我々は、MHCクラスII分子を介したT細胞への抗原提示に着目し、Epstein-Barr (EB) ウイルスの再活性化がMHCクラスII分子の機能を異常にさせることを見出した。この抗原提示異常の結果、正常時には提示されない自己由来の抗原、すなわち「ネオセルフ (neoself)」がMHCクラスII分子に提示される。驚くべきことに、ネオセルフは通常のセルフ抗原と同一のタンパク質に由来するにもかかわらず、T細胞は両者を明確に識別する。正常状態では提示されないネオセルフには免疫寛容が成立していない。このため、EBウイルスの再活性化が繰り返されると、提示されたネオセルフがT細胞を強力に活性化・増殖させ、自己組織への攻撃を惹起する。事実、全身性エリテマトーデス (SLE) 患者においてクローナルに増殖したT細胞の約10%がネオセルフに応答性を示し、ネオセルフが自己免疫応答における主要標的であることが判明した。本研究は、従来の「セルフ」の概念が、免疫寛容の対象となる「セルフ」と、そうでない「ネオセルフ」に分類されるべきことを提唱する。そして、ウイルス感染がMHCクラスIIの機能異常を直接引き起こし、ネオセルフの提示を介して自己応答性T細胞を活性化させるという、全く新しい自己免疫疾患の発症機構が明らかになった。