English
Top

脳腫瘍における遺伝子異常と起源細胞の解明

学友会セミナー

開催情報

開催日時 2024年8月6日(火)15:00 ~ 16:00
開催場所 1号館講堂 
講師 鈴木 啓道
所属・職名 国立がん研究センター研究所 脳腫瘍連携研究分野・分野長
演題 脳腫瘍における遺伝子異常と起源細胞の解明
世話人
主たる世話人:
柴田 龍弘(ゲノム医科学分野)
中西 真(癌防御シグナル分野)
 
 
 
 
       
       
       
 
       
       
       

概要

脳腫瘍は130種類以上に分類される多様な疾患であり、それぞれの疾患は異なる遺伝子異常や臨床経過を有している。この多様性は、脳腫瘍の起源細胞の違いに起因すると考えられている。
近年、シークエンス技術の飛躍的な進歩により、全ゲノムシークエンスや単一細胞解析が一般化してきた。これらの技術は腫瘍細胞の特性を解明する上で非常に強力である。この技術の進展により、脳腫瘍は異なる起源細胞から発生し、これらの起源細胞に特有の遺伝子異常が腫瘍化を引き起こすことが明らかとなってきた。
主要な脳腫瘍において、起源細胞と遺伝子変異の関連性が解明され、その病態の理解が進んでいる。私たちはその中でも小児の悪性脳腫瘍である髄芽腫に焦点を当て、研究を進めてきた。全ゲノムシークエンスなどのシークエンス解析を通じて、髄芽腫における遺伝子異常を明らかにし、正常発達脳由来の単一細胞データを用いた起源細胞の推定によりその関連性を解明してきた。髄芽腫は発達段階にある後脳の神経前駆細胞を起源とし、その発達段階に応じた特異的な遺伝子異常が生じることで、正常な神経分化が阻害され、細胞遺残が生じる結果、生後に髄芽腫へと発展することが明らかとなった。
近年のシークエンス技術の進展により、起源細胞と遺伝子異常の関係が明らかにされ、脳腫瘍の発生機序の理解が深まっている。この知見は、細胞分化を標的とする新規治療法の開発や基礎研究の進展に寄与すると期待される。