RAS癌のシグナル療法:PAK経路を遮断するアプローチ
学友会セミナー
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2002年開催 学友会セミナー

開催日時: | 2002年4月11日(木)16:00 ~ 17:00 |
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開催場所: | 東京大学医科学研究所 1号館2階会議室 |
講 師: | 丸田 浩 博士 |
所 属: | ルートビッヒ国際癌研究所(メルボルン支部)制癌剤開発部長 |
演 題: | RAS癌のシグナル療法:PAK経路を遮断するアプローチ |
概 要: | ヒトの癌の30%以上がRAS遺伝子に発ガン性変異をもっている。特に、脾臓癌の場合は90%以上、結腸癌の場合も50%以上がRASの変異を伴う癌である。そこでわが研究室では、十数年前からシグナル伝達性Gタンパク質「RAS」の変異 がいかなるメカニズムを介して細胞の癌化を起こすかを研究してきた。その結果、数種の異なるキナーゼ経路がRASによる癌化に必須であることが分かってきた。その内で、今回は癌化、つまり「血清/足場非依存性の増殖」、の鍵を握る「PAK」というキナーゼを中心にして、1)RASによるPAKの活性化メカニズムと、2)その活性化を特異的に抑えるぺプチドや薬剤AG879やPP1などを駆使してRASの変異によって発生する癌の増殖を選択的に制御する、いわゆる「シグナル療法」について詳しく紹介したいと思う。 シグナル療法剤が、従来のDNA合成を抑える制癌剤、例えばマイトマイシンCやブレオマイシン、あるいは微小管阻害剤、例えばビンブラスチン、とはっきり異なる利点は、正常細胞の増殖には必ずしも必要でないが、癌細胞の増殖には必須な「特定のシグナル経路」だけを特異的に抑えるという点にある。従って、従来の制癌剤に比べて、正常細胞への「副作用」がずっと低いことが予想されるわけである。 |
世 話 人: | 新井 賢一 竹縄 忠臣 |
