PTEN/PI3キナーゼ経路による生体制御
学友会セミナー
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2006年開催 学友会セミナー
開催日時: | 平成18年9月14日(木) 16:00~17:30 |
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開催場所: | アムジェンホール大会議室 |
講 師: | 鈴木 聡 博士 |
所 属: | 秋田大学医学部構造機能医学講座 教授 |
演 題: | PTEN/PI3キナーゼ経路による生体制御 |
概 要: | 様々な増殖因子受容体刺激等によって活性化されるPI3キナーゼは、ホスファチジルイノシトール-4,5-二燐酸(PIP2)をリン酸化して、ホスファチジルイノシトール-3,4,5-三燐酸(PIP3)を生成し、それにより下流の主にAktを介するシグナルが活性化される。Akt自身癌遺伝子であり、PI3キナーゼ経路の異常は癌化に重要な役割を演じることが明らかになってきている。 PTENはPIP3を主な基質とするホスファターゼであり、PI3キナーゼの経路を負に制御している。 我々はこれまでにT細胞、肝細胞、ケラチノサイト、前立腺上皮細胞、膀胱上皮細胞のそれぞれに特異的なPTEN変異マウスは発癌に至ること、またPTEN変異により発癌以外の種々の疾患や生理変化をひきおこすことを見出してきた。 また血管内皮細胞特異的PTEN変異マウスでは、腫瘍血管新生が亢進し、腫瘍進展の加速がみられること、さらにNKT細胞におけるPTEN変異は、成熟NKT細胞の減少・機能障害をひきおこすことを見出した。これらのことからPTEN変異によって種々の癌がおこることのみならず、PTENは血管新生能や腫瘍免疫監視能を制御し、癌の進展を防御する働きがあることが明らかになった。 現在、PTENと結合する新規分子群や、PTEN以外の癌抑制遺伝子の機能解析にも着手しており、細胞内シグナル伝達の側面から発癌の分子メカニズムを明らかにしようと日夜奮闘している。 |
世 話 人: | ○井上 純一郎、清木 元治 |