「遺伝子発現解析からがんの治療へ」
学友会セミナー
学友会セミナー
2006年開催 学友会セミナー
開催日時: | 平成18年9月25日(月) 16:00~17:30 |
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開催場所: | アムジェンホール大会議室 |
講 師: | 古川 洋一 博士 |
所 属: | 東京大学医科学研究所 研究拠点形成ゲノム医療プロジェクト推進 特任教授 |
演 題: | 「遺伝子発現解析からがんの治療へ」 |
概 要: | がんの発生・進展には、遺伝子の構造的な変化のみならず、数多くの遺伝子の量的な変化が関与している。がん化に関与する遺伝子群の機能解析を通じて、新たな治療法を開発する為に、我々はゲノムワイドな遺伝子発現解析を行い、新たながん関連遺伝子の同定を試みてきた。その結果、大腸腫瘍の発生に重要な役割を演ずるWntシグナルの下流遺伝子群や、がんでの発現が増加し、腫瘍の増殖に必須な遺伝子群を同定した。これらの遺伝子の中でSMYD3は、大腸がんや肝がん、乳がんで高発現し、ヒストンH3のK4に対するメチルトランスフェラーゼをコードしていた。またSMYD3タンパクは RNA polymerase IIと複合体を形成し、配列特異的に標的遺伝子のプロモーターに結合し、転写を活性化していた。さらにSMYD3のプロモーター領域には、転写因子E2F1結合配列があり、E2F1の活性化により発現が亢進していることが示唆された。野生型のSMYD3は細胞増殖を促進すること、siRNAによるSMYD3発現抑制により、腫瘍細胞の増殖が阻害されることから、SMYD3は新たな抗がん剤開発の有望な標的分子である。現在、SMYD3特異的なメチルトランスフェラーゼ阻害薬の開発に向けて、企業との共同研究を進めている。またSMYD3がどのようなメカニズムで細胞増殖に関与しているか研究を行っているので、その成果も紹介したい。 |
世 話 人: | ○井上 純一郎、清木 元治 |