集中治療後症候群(PICS)モデルから捉える筋・脳連関と神経免疫制御 ― 運動模倣薬の可能性 ―
学友会セミナー
開催情報
| 開催日時 | 2026年1月8日 14:00-16:00 |
|---|---|
| 開催場所 | 1号館 講堂 |
| 講師 | 今井 由美子 |
| 所属・職名 | Shonan Research Institute for Innovative Medicine (sRIIM)・Chief Research Scientist |
| 国名 | 日本 |
| 演題 | 集中治療後症候群(PICS)モデルから捉える筋・脳連関と神経免疫制御 ― 運動模倣薬の可能性 ― |
| 世話人 | ◎COBAN, Cevayir・マラリア免疫学分野 〇坊垣 昌彦・外科系診療部門麻酔科 |
概要
集中治療後症候群(Post-Intensive Care Syndrome: PICS)は、ICU退室後も持続する筋力低下、抑うつ、認知機能障害を特徴とし、とくに高齢患者ではサルコペニアの進行と相互に増悪する。近年、PICSにおける神経・精神症状の背景として、中枢神経系の免疫恒常性破綻, とりわけミクログリアの持続的活性化が注目されているが、その誘因となる末梢シグナルは十分に解明されていない。本セミナーでは、肺の急性侵襲と筋不動化を組み合わせたPICSモデルから得られた知見を基に、骨格筋を起点とした神経免疫制御の破綻という観点からPICSの分子病態を考察する。急性期回復後にも持続する骨格筋萎縮や全身炎症に伴い、脳内ではミクログリア活性化や神経炎症関連シグナルの変調が認められ、これらが抑うつ様行動や認知機能低下と関連することが示唆された。運動により誘導されるマイオカインであるアペリンに着目した解析から、アペリンシグナルの低下がPICS様病態およびミクログリア活性化と関連し、その回復が神経行動異常の改善につながり得ることを示した。これらの知見は、アペリンを代表とする運動模倣薬(exercise mimetics)が、神経免疫環境を再調整する分子介入として、運動介入が困難なPICSや老化関連サルコペニアに対し有効となる可能性を示唆している。さらに、筋由来シグナルがミクログリア機能を制御する分子基盤として、細胞外小胞(EV)を含む新たな情報伝達様式にも触れ、PICSを神経免疫制御の破綻として再定義する枠組みと今後の研究展開について議論したい。
