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胸腺依存的な免疫寛容の誘導を制御する分子機構

学友会セミナー

学友会セミナー:2008年07月31日

開催日時: 2008年07月31日 13:00から
開催場所: 2号館2階小講義室
講師: 秋山泰身 博士
所属: 東京大学医科学研究所 分子発癌分野
演題: 胸腺依存的な免疫寛容の誘導を制御する分子機構
概要:

健康な個体では自己の組織や無害な非自己に対する免疫応答が抑制された状態、すなわち免疫寛容が成立している。一方で、その破綻は自己免疫疾患やアレルギーなどの免疫病の原因となり得る。免疫寛容を成立、維持する機構を解明し、それを応用することで免疫病の予防や治療だけでなく、癌に対する免疫応答の惹起も期待できる。
 免疫寛容は様々な機構が機能することで成立する。その一つが胸腺における免疫寛容の誘導機構である。胸腺は獲得免疫に重要なTリンパ球を産生するが、同時に自己組織に応答するTリンパ球を除去する。この免疫寛容誘導機構に胸腺を構築する細胞のサブセットである髄質上皮細胞が重要であることが提唱された。しかしながら、その分化を制御する分子機構については不明な点が多い。
 これまで研究から、髄質上皮細胞の分化にはTNF receptor-associated factor 6 (TRAF6)やNF-kB inducing kinase (NIK)などを介したNF-kB活性化が必須であることが判明していた。しかしながら、その活性化を誘導する細胞外シグナルは不明であった。その探索を行った結果、Receptor activator of NF-kB (RANK)とCD40が協調的に機能することで、髄質上皮細胞の分化を制御することを見つけた。またRANKリガンドやCD40リガンド存在下、未熟な上皮細胞を含む胎仔胸腺ストローマを培養することで、成熟した髄質上皮細胞を誘導できた。そして、その分化誘導はTRAF6やNIK依存的であった。以上の結果から、胸腺の髄質上皮細胞はTRAF6とNIKを介するRANK、CD40シグナルにより分化し、自己免疫寛容を誘導すると結論した。

世話人: ○山本 雅、井上 純一郎