概要: |
マクロファージはその発見以来100年以上もの間、一種類の細胞しかないと考えられており、サブタイプが複数ある他の免疫細胞と比較すると日陰の存在であった。しかし近年、徐々に再度スポットライトが当てられ始めている。
その中でも、最近のトピックの1つとして、M1・M2マクロファ-ジが挙げられる。しかし、私たちはマクロファ-ジはM1・M2ではなく更に詳細なサブタイプに分かれると仮定して研究を行った。その結果、アレルギ-に関わるサブタイプはJmjd3により分化する事*1、またメタボリックシンドロ-ムに関与するサブタイプはTrib1より分化する事を突き止めた*2。これらの研究から、現在私たちは病気ごとの“疾患特異的マクロファ-ジ”が存在している可能性を考えている。
新たな疾患特異的マクロファ-ジを探索するために、線維症に着目した。線維化初期に患部で増えるマクロファ-ジについて解析を行ったところ、Ly6C-Mac1+分画の一部の細胞が、線維症の発症に必須である事を突き止めた。この細胞の形態的特徴を解析したところ、2核様の形態をとっていたので、Segregated nucleus atypical Monocyte (SatM)と名付けた*3。 現在はこの細胞に影響を与える非免疫系因子の研究も行っている。
このように、私たちの体には未だ見つかっていない“疾患特異的マクロファージ”が存在しており、各々が対応する疾患が存在していると考えられる。これらの疾患特異的な細胞を標的とした創薬は、その疾患特異性の高さから、副作用の少ない創薬応用につながることが期待される。
【参考文献】
(1) Satoh T., et al, Nat Immunol. 2010 Oct;11(10):936-44.
(2) Satoh T., et al, Nature. 2013 Mar 28;495(7442):524-8.
(3) Satoh T., et al, Nature. 2017 Jan 5;541(7635):96-101
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