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RSウイルス感染症とワクチン開発

学友会セミナー

学友会セミナー:2019年08月05日

開催日時: 2019年08月05日 14:00 ~ 15:00
開催場所: 国際粘膜ワクチン開発研究センター会議室(4号館3階)
講師: 柴田 岳彦
所属: 国立感染症研究所免疫部・主任研究官
演題: RSウイルス感染症とワクチン開発
概要:

ほぼ100%の乳幼児が2歳までに respiratory syncytial virus (RSウイルス) に感染し、細気管支炎や肺炎といった重篤な下気道疾患に陥ることがある。一方、健康な成人では感冒程度の軽症で済むことが多いが、それでも繰り返し感染する。RSウイルス感染による重症化は乳児に限らず高齢者でもみられ、しばしば肺炎球菌などによる二次性細菌感染の原因となる。また喘息や COPD などの呼吸器基礎疾患があると、RSウイルス感染による増悪が誘導されることがある。このような状況下、RS ウイルス感染症に対する根本的なワクチンや治療薬の開発には至っていない。1960 年代に行われたRSウイルスワクチンの臨床試験では、有効な抗RSウイルス抗体が誘導されなかったばかりか、接種後の RS ウイルスの自然感染に伴いアレルギー性気道炎症がおき、かえ って病態が悪化し、死に至るケースもあった。現在考えられているこの原因は、RSウイルスのglycoprotein (Gタンパク)が誘導する過剰な2型免疫応答である。それゆえ世界的にはRSウイルスのfusion proteinを抗原としたワクチン開発が進められている。それでもなお、臨床試験での成功には至っていない。これに対して我々は、growth arrest specific 6 /Axlシグナルの新しい役割に注目し、1.従来のRSウイルスワクチンによるアレルギー発症機構、2.Gタンパクを標的としたワクチン開発の可能性、3.RSウイルス感染に伴う二次性細菌感染の誘導機構を見出した。本セミナーでは、我々の研究成果とともにRSウイルス感染症とワクチン開発について紹介する。

世話人: 〇清野 宏 (粘膜免疫学部門)
 藤橋 浩太郎 (臨床ワクチン学分野)