がん細胞における染色体動態制御システムの破綻--- 明かされつつある染色体不安定性の分子背景
学友会セミナー
学友会セミナー:2018年09月10日
開催日時: | 2018年09月10日 16:00 ~ 17:00 |
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開催場所: | 1号館 講堂 |
講師: | 広田 亨 |
所属: | 公益財団法人がん研究会がん研究所 実験病理部・部長 |
演題: | がん細胞における染色体動態制御システムの破綻--- 明かされつつある染色体不安定性の分子背景 |
概要: | 染色体不安定性は、がん組織を構成する細胞の多様性を大きくする要因であり、病期の進行したがんに共通して出現する性質である。その主たる原因は、M期における染色体分配過程のエラーであると考えられているが、その一方で、M期制御分子の遺伝子変異は少なく、何故がん細胞は染色体分配を失敗するのか、その病理機構の解明が待たれている。わたくしたちの研究室では、ヒト細胞が染色体の構築から分配までを滞りなく進める細胞機能を追究し、それを基盤として染色体不安定性の病理機構の解明を目指している。具体的には、これまでの研究で、M期染色体の構築、特にセントロメアの構築、動原体と微小管の結合、M期チェックポイントとその解除が導くセパレースの活性化、といったプロセスの研究を通じて、細胞分裂を支える細胞機能の解明に貢献してきた。他方でこれらのプロセスががん細胞でどのように変化しているのか、未だによくわかっていない。本講演では、Aurora Bキナーゼとプロテアーゼであるseparaseという2つのM期制御分子を基軸として見えてきた染色体動態制御システムをご紹介し、それぞれの制御システムの破綻とがん細胞の染色体不安定性の関連性について議論したい。こうした細胞病態の理解を深めることにより、がん細胞が抱えている脆弱性に着眼した新たな制御法の導出にも挑戦したいと考えている。 |
世話人: | 〇中西 真 (癌防御シグナル分野)
山田 泰広 (先進病態モデル研究分野) |