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免疫寛容と免疫監視から見たがん免疫研究

学友会セミナー

学友会セミナー:2018年08月16日

開催日時: 2018年08月16日 16:00 ~ 17:00
開催場所: 1号館講堂
講師: 西川 博嘉
所属: 国立がん研究センター先端医療開発センター免疫TR・分野長
演題: 免疫寛容と免疫監視から見たがん免疫研究
概要:

免疫チェックポイント阻害剤の臨床導入に伴い、治療抵抗性の一つの要因として、免疫抑制細胞が注目されている。我々は自己に対する免疫寛容に関わる制御性T細胞Treg)に着目し、がんに対する免疫監視機構をTregが抑制し、腫瘍増殖に関わっていることを動物モデル、ヒト検体を用いて示してきた。さらに、ヒトがん局所に存在するTregの分子発現を詳細に解析し、CCR4分子などが強発現していることを示し、抗CCR4抗体によるTreg除去療法の臨床治験へと展開した。しかし抗CCR4抗体の治療効果は十分に認められなかったことから、新たな治療法開発に向けたがんゲノム解析と一体となった腫瘍微小環境の検討を進めている。これにより、がん細胞が持つドライバー遺伝子変異が直接的に免疫細胞浸潤をコントロールしていることを解明し、ドライバー遺伝子下流のシグナルを調節することにより、Treg 浸潤をコントロールするという新たな視点のがん免疫療法へと展開している。
また免疫チェックポイント阻害剤治療によって誘発される自己免疫関連有害事象への治療にステロイド製剤が用いられるが、治療効果は減弱していない可能性が臨床現場から指摘されている。マウスモデルを用いてこれらの臨床的課題に取り組み、ステロイド製剤が、T細胞レセプターの親和性の相違により、脂肪酸代謝調節を介して免疫記憶細胞誘導に異なる抑制効果を発揮することを明らかにし、抗腫瘍効果が選択的に残存するメカニズムを解明した。
本講演では、以上のような個々のがん患者のがん局所での免疫応答を統合的に検討することで、がん免疫応答の本態を解明し、治療開発に如何につなげていくかを議論したい。
 

世話人: 〇柴田 龍弘 (ゲノム医科学分野)
 井元 清哉 (健康医療データサイエンス分野)