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脳梗塞と無菌的炎症 ~炎症は敵か? 味方か?~

学友会セミナー

学友会セミナー:2018年04月20日

開催日時: 2018年04月20日 15:30 ~ 16:30
開催場所: 病院棟8階北会議室
講師: 七田 崇
所属: 東京都医学総合研究所・脳卒中ルネサンスプロジェクトリーダー
演題: 脳梗塞と無菌的炎症 ~炎症は敵か? 味方か?~
概要:

脳卒中は本邦における死因の第4位、寝たきりの原因の第1位であり、高齢化社会に伴って患者数の増加が懸念されている。脳卒中の約7割を脳梗塞が占めるが、脳梗塞の治療法はまだ十分に確立していない。脳梗塞後の炎症の程度は患者の生活予後とも密接に関連することから、炎症を制御することによって新規の脳梗塞治療剤を開発できる可能性がある。次世代の脳卒中医療の開発には、脳梗塞後の炎症/修復メカニズムを詳細に明らかにすることが必要不可欠である。
 脳には細菌やウイルスなどの病原体が存在しないため、脳梗塞後の炎症は無菌的炎症の典型例と言える。虚血壊死した脳細胞からは炎症を惹起する分子(DAMPs:damage associated molecular patterns)が産生されて、脳に浸潤したマクロファージをToll様受容体(TLR)依存的に活性化し、炎症性因子の産生を強く誘導する。このような炎症性因子は直接的に神経細胞を傷害するが、一部はさらにTリンパ球による炎症をも引き起こす。
以上のような炎症応答を引き起こす元凶であるDAMPsはやがて脳内から排除され、修復プログラムが発動する。体内における炎症は、炎症後の組織修復をも誘導する可能性があるが、そのメカニズムはほぼ未解明である。脳にとって炎症は敵か?味方か? どの炎症を、いつどうやって制御すれば、脳の修復機能を最大限に誘導できるのかを詳細に知ることが、脳梗塞治療の進歩につながると考えられる。

世話人: 〇渡辺 すみ子 (再生基礎医科学)
 三宅 健介 (感染遺伝学分野)