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受容体標的化ヘルペスウイルスを用いた腫瘍溶解性ウイルス療法の開発

学友会セミナー

学友会セミナー:2018年02月08日

開催日時: 2018年02月08日 17:00 ~ 18:00
開催場所: 1号館2階 2-1会議室
講師: 内田 宏昭
所属: 東京大学医科学研究所 臓器細胞工学分野・講師
演題: 受容体標的化ヘルペスウイルスを用いた腫瘍溶解性ウイルス療法の開発
概要:

正常組織を傷害することなく、原発巣および転移巣に存在するがん細胞のみを選択的かつ強力に攻撃することができれば、理想的な治療法となると考えられる。私たちは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の遺伝子改変により、本来のHSV受容体ではない特定の細胞表面抗原のみを介して侵入し殺傷しうるHSV(受容体標的化HSV)の構築系を開発したので紹介する。
 HSVの細胞内侵入は、ウイルス外被の糖蛋白質D(gD)が宿主細胞の受容体に結合することにより成立する。gD受容体は様々な正常細胞に発現している。私たちは、gDが受容体に結合不能となるよう欠失・変異を施しこれにがん細胞表面抗原に対する単鎖抗体を挿入することにより、その抗原を発現する細胞のみに侵入し殺傷する標的化HSVの作製に成功した。担がんマウスにて標的化HSVの腫瘍内投与により強力な抗腫瘍効果を認め、標的化HSVを静脈内投与すると腫瘍への集積(正常臓器の100-1,000倍)を認めた。さらに、標的化HSVは野生型HSVの致死量の10万倍の粒子数を脳内投与しても、標的抗原を有さないマウスに異常を生じないという結果を得た。
 現在、この受容体標的化HSVの抗腫瘍効果をさらに増強する方法を検討するとともに、抗体結合型変異gDを組み込んだHSVをプローブに用いた抗体スクリーニング系を樹立し、受容体標的化HSVへの応用に好適な抗原・抗体の探索を進めている。

世話人: 〇藤堂 具紀 (先端がん治療分野)
 東條 有伸 (分子療法分野)