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神経変性疾患で脳に蓄積する異常タウ蛋白のアイソフォームの分布

学友会セミナー

学友会セミナー:2018年01月18日

開催日時: 2018年01月18日 17:00 ~ 18:00
開催場所: 4号館3階 国際粘膜ワクチン開発研究センターセミナー室
講師: 植松 未帆
所属: 東京大学医科学研究所システム免疫学社会連携研究部門
特任研究員
演題: 神経変性疾患で脳に蓄積する異常タウ蛋白のアイソフォームの分布
概要:

タウ蛋白は、神経軸索内に存在し、微小管の重合促進や安定化に関わる。タウには18アミノ酸の繰り返し配列(R1-R4)で構成される微小管結合ドメインがあり、同部位の遺伝子の選択的スプライシングにより、4リピート(4R)型(R1-R4)、または3リピート(3R)型(R1,3,4)のアイソフォームが存在する。アルツハイマー病(AD)の脳組織では、過剰にリン酸化されたタウ蛋白が、難溶性線維として凝集し神経原線維変化(Neurofibrillary tangle, NFT)を形成する。ADのNFTは3R型と4R型両方の異常タウ蛋白によって構成されるが、3R型と4R型の分布は常に一様ではない。ADの海馬病変では、NFT形成前段階であるpretangleは4R型、古典的NFTは3R型/4R型の混合、細胞が死んだ後に脳組織に残存する末期のghost tangleは3R型と、進行に伴って、4R型から3R型へ変化していくことが先行研究で示されている。さらに、タウ病変が大脳に先駆けて最も早期から認められる脳幹においても、病期の進行に伴い3Rタウ病変の割合が増加していくことが、包括的定量解析によって確かめられた。しかしながら、3R型と4R型のタウ・アイソフォームがそれぞれどのようにNFTの難溶性線維を構成するのかは未だ明示されていない。演者は、先行研究において、細胞内封入体の蛍光像と電顕像を、quantum dot(蛍光を発し、高電子密度のため電顕でも観察できるナノクリスタル)による免疫標識を利用して直接対比する新規技術を提示した。この手法を様々な形成過程のNFTに応用することにより、4Rタウ陽性のpretangleと、3Rタウ陽性のghost tangleの線維構造の差異を、二重免疫電顕で観察した。病変進行に伴う3Rタウの割合の増加は、皮質病変と脳幹病変に共通して起こる現象であり、ADの進行において重要な役割を担う可能性がある。

世話人: 〇三宅 健介 (感染遺伝学分野)
  清野 宏 (炎症免疫学分野)