English
Top

悪性リンパ腫を引き起こすCARD11とMYD88の突然変異について

学友会セミナー

学友会セミナー:2018年01月04日

開催日時: 2018年01月04日 17:00 ~ 18:00
開催場所: 1号館2階 2-3会議室
講師: 堀川 啓介
所属: Research Fellow, ACRF Department of Cancer Biology and Therapeutics The John Curtin School of Medical Research, The Australian National University, Australia
演題: 悪性リンパ腫を引き起こすCARD11とMYD88の突然変異について
概要:

細胞内アダプター分子であるCARD11とMYD88は、異物を認識するB細胞抗原受容体やToll様受容体からの細胞内シグナル伝達に関わっており、Bリンパ球の増殖、機能に必須の転写因子NF-κBを活性化する。これらCARD11とMYD88 が悪性リンパ腫において高頻度に点突然変異を受けることが分かってきた。我々のグループは、レトロウィルスによる遺伝子導入を用い、ヒトの悪性リンパ腫でみられるCARD11とMYD88の点突然変異がマウスB細胞にどのような影響を与えるかを調べている。変異型CARD11は、増殖因子なしで試験管内及びマウス個体内でB細胞の増殖を誘導すること分かった。また多数のCARD11変異を調べた結果、興味深いことに、一部の変異は自己反応型のB細胞抗原受容体に依存して活性化することが分かった。リンパ腫で高頻度にみられるMYD88 L265P変異も同様に増殖因子なしでB細胞の増殖を誘導すること分かったが、自己反応型B細胞の除去を抑制しなかった。MYD88 L265P変異の活性化には、エンドソームに発現しているToll様受容体であるTLR9が必要であることが分かった。これらの結果は、リンパ腫でみられる遺伝子変異の機能的多様性を示すとともに、変異型CARD11とMYD88の活性化に必要なメカニズムがリンパ腫治療の標的となることを示唆した。

世話人: 〇 東條 有伸 (分子療法分野)
  内丸 薫  (新領域・病態医療科学分野)