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新規の気道炎症制御機構“CD69-Myl9システム”

学友会セミナー

学友会セミナー:2017年12月19日

開催日時: 2017年12月19日 17:00 ~ 18:00
開催場所: 総合研究棟4階会議室
講師: 林崎 浩史
所属: 千葉大学大学院 医学系研究員 免疫発生学分野・特任助教
演題: 新規の気道炎症制御機構“CD69-Myl9システム”
概要:

  近年、喘息を含む慢性炎症疾患は急速に増加している。CD4陽性T細胞はアレルギー性気道炎症の病態形成において中心的な役割を果たしており、私たちは、活性化CD4 陽性T細胞上に発現するCD69が、アレルギー性気道炎症の誘導に必須であることを明らかにしてきた。しかしながら、CD69がどのような機構を介してアレルギー性気道炎症を制御するかは不明であった。
 その機構を解明する目的で、我々は、CD69のリガンドとして、ミオシン軽鎖9/12(Myl9/12)を同定した。そして、CD69とMyl9/12の会合を阻害する抗Myl9/12抗体は、Ovalbumin誘導性アレルギー性気道炎症やHouse dust mite誘導性気道炎症を顕著に抑制することがわかった。また炎症肺では、Myl9/12の発現が顕著に亢進し、Myl9/12が血管内腔で網目状構造(Myl9 nets)を形成していることを明らかにした。Myl9は血小板で高発現することがこれまでに報告されていた。実際に、血小板は多くのMyl9/12タンパク質を含有しており、また活性化に伴い、細胞外にMyl9/12を産生しうることを見出した。そして、血小板特異的抗体投与による血小板除去は、気道炎症における血管内腔のMyl9/12発現を低下させたことから、炎症組織でみられるMyl9/12は活性化した血小板により産生されることが示唆された。以上の結果より、炎症肺に形成されたMyl9 netsは、CD69陽性炎症細胞が組織へ移入するためのプラットフォームとして機能していると考えた。我々はこのMyl9 netsを介した炎症細胞の組織への動員システムを“CD69-Myl9システム”と命名した。
 さらに、ヒトの慢性炎症疾患である好酸球性慢性副鼻腔炎(ECRS)ポリープでは、血管内腔のみならず、血管周囲においてMyl9/12の発現が認められ、CD69陽性細胞との共局在が多く観察された。このことは、ヒトの慢性炎症疾患において、CD69-Myl9システムが、炎症細胞の炎症組織への動員ならびに維持において重要であることを示唆している。CD69-Myl9システムの阻害は、これまで治療法が確立されていない慢性炎症疾患の新規治療ターゲットになりうると考えている。

世話人: 〇清野 宏 (臨床ワクチン学分野)
  三宅 健介 (感染遺伝学分野)