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パラミクソウイルス病原性発現に関与するウイルス-宿主タンパク質相互作用の解析

学友会セミナー

学友会セミナー:2017年09月04日

開催日時: 2017年09月04日 13:00  ~  14:00
開催場所: 総合研究棟2階共用会議室
講師: 内田 翔太郎
所属: 実験動物研究施設・特任研究員
演題: パラミクソウイルス病原性発現に関与するウイルス-宿主タンパク質相互作用の解析
概要:

パラミクソウイルス科にはニパウイルス(NiV)や麻疹ウイルス(MV)など、病原性の高いウイルスが含まれている。NiVはヒトに感染すると致死的な脳炎を引き起こし、現在有効な治療法、予防法は未だ確立されていない。MVは、はしかだけでなくまれに亜急性硬化性全脳炎等の致死的な神経合併症を引き起こし、これらの合併症に対する治療法は未だ存在しない。発表者らは、これらの病原体による分子レベルでの病原性発現機構の基礎的な研究にとり組んできた。
NiVはほかのパラミクソウイルスには見られない特徴の一つとして、ゲノム上に長い非コード領域を持つ。そこで発表者は、長い非コード領域が非翻訳領域(UTR)としてmRNA上に転写されることに着目し、それらの機能解析を行った。その結果、各遺伝子の発現が5’ UTRによって制御されていることを見出した。
発表者の研究室は、非構造タンパク質であるVタンパク質が共通してNiVやMVの病原性発現において不可欠であることを明らかにしてきた。発表者はNiV Vタンパク質の機能解析を行い、その新たな宿主相互作用分子としてUBXN1を同定した。UBXN1は宿主免疫系の抑制因子であり、Vタンパク質はUBXN1を安定化し宿主免疫系を抑制する活性を有することを見出した。また、発表者らはマウスを用いたMVの神経病原性モデルの構築に成功し、このモデルを用いてMV Vタンパク質とUBXN1の相互作用がMV神経病原性において重要な役割を果たしていることを明らかにした。
本セミナーでは上記の内容に加え、組換えウイルスによる解析等によって得られたVタンパク質の新規機能に関する知見も紹介する。

世話人: 〇吉田 進昭 (発生工学研究分野)
  三宅 健介 (感染遺伝学分野)