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癌抑制RB蛋白質とp53の生理機能の新しい制御機構

学友会セミナー

学友会セミナー:2008年04月03日

開催日時: 2008年04月03日 18:00 ~ 19:00
開催場所: 1号館 講堂
講師: 田矢 洋一
所属: シンガポール国立大学癌研究所
(前国立がんセンター研究所・放射線研究部長)
演題: 癌抑制RB蛋白質とp53の生理機能の新しい制御機構
概要:

我々は以前にp53のSer46のリン酸化がアポトーシス誘導能を制御することを見出したが(1)、そのSer46を他のアミノ酸に置換した実験を進めているうちに、エンドサイトーシスで重要な働きをするクラスリンの重鎖(CHC)が一部分核内にも存在してp53依存性転写とアポトーシス誘導に必須の働きをすることを見つけた(2)。それを続けていたところ、p53が逆に細胞膜周辺にも存在してエンドサイトーシスや細胞運動を制御するという全く予想外のことも発見した。また、癌で見られるALK融合蛋白質がp53のTyrをリン酸化して失活させることも見つけた。
一方、私は1989年にRB蛋白質(pRB)がサイクリン依存性キナーゼ(Cdk)でリン酸化されることを示して以来、pRBリン酸化の生理的意義の研究も続けている。そして、pRB上の約13カ所のリン酸化部位を別々に認識する抗体をすべて作製し、Cdk4-cyclin D1特異的な部位とCdk2-cyclin E特異的な部位とに区別できることも明らかにした。そして、Cdk4-cyclin D1特異的な部位はE2Fの解離に、Cdk2-cyclin E特異的な部位はLXCXEモチーフを持つBrg1やRBP1などの解離に使われることを明らかにした。さらに、DNAダメージに際してほとんどの部位は脱リン酸化されるが、Ser612のみは逆にリン酸化が高まり、それがE2F-1との結合を促進するというこれまた予想外のことを見いだした(3)。

(1) Oda et al.: Cell, 102, 849-862 (2000).
(2) Enari et al.: Genes & Dev.,20, 1087-1099 (2006).
(3) Inoue et al: EMBO J. 26, 2083-2093 (2007)

世話人: ○ 村上善則 (75260)、山本雅