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講演1部 選択感染型腫瘍溶解アデノウイルスの作成と応用 講演2部 アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターと遺伝子治療: 次世代中枢神経系遺伝子導入ベクターの開発にむけて

学友会セミナー

学友会セミナー:2017年07月27日

開催日時: 2017年07月27日 16:00 ~ 17:30
開催場所: 2号館小講義室
講師: 1.山本 正人
2.中井 浩之
所属: 講師1.ミネソタ大学外科学・教授、基礎・トランスレーショナル
研究室ディレクター

講師2.オレゴン健康科学大学医学部 分子遺伝医学・教授
演題: 講演1部 選択感染型腫瘍溶解アデノウイルスの作成と応用

講演2部 アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターと遺伝子治療:
次世代中枢神経系遺伝子導入ベクターの開発にむけて
概要:

講演1部
癌の診断法は長足の進歩を遂げているが、未だに多くの患者が、診断時点で局所での広がりまたは転移のために、外科的治療を受けられない状態で見つかってくる。これらの患者を救うためには局所療法では不十分で、腫瘍罹患臓器以外の広範な治療を可能にするベクターの開発が待たれている。アデノウイルスは、比較的よく増殖メカニズムの解明されているウィルスで、fiber先端部のAB-loopが細胞表面のレセプターに結合することで感染がおこる。我々はこの部分に7アミノ酸のランダム・ライブラリーを入れたhigh-diversity libraryを作成し、oncolytic virusの特性を利用したhigh-throughput screeningを行って、様々な癌細胞表面の抗原を標的とするウィルスを作成してきた。Mesothelinを標的とするウィスルスは、全身投与で膵癌xenograft modelに対する良好な治療効果を示し、hexonのさらなる改変による他の臓器によるsequestrationの低減はさらなる治療効果の増強を期待させる。CD133を標的とするウィルスは、大腸癌の腫瘍形成能を著しく抑制し、特に放射線療法抵抗性の大腸癌に対する治療効果を示す。これらの例は、選択感染型腫瘍溶解アデノウイルスのポテンシャルと広い応用可能性をしめすものである。

講演2部
AAVベクターは直接体内に投与することにより安全に効率よく遺伝子導入ができることから、現在最も好んで遺伝子治療に用いられているウィルスベクターである。とはいえ、不十分な組織特異性、中和抗体によるベクターの失活、免疫原性など、解決すべき問題が残されているのも事実である。中枢神経系細胞遺伝子導入においては、静脈投与にて血液脳関門(BBB)の透過性が示されているAAVベクターはあるもののBBB透過には高力価投与が必要性であり、中枢神経系細胞特異的に効率よく遺伝子を導入しうるベクターはまだ開発されていない。我々の研究室では、これらの問題を克服すべく、DNA・RNAバーコーディングと次世代シーケンスを組み合わせた網羅的AAVベクター機能解析法を考案し、解析によって得られたウィルス構造機能相関に関する膨大な情報に基づいた知識基盤の構築とその新規ベクター開発への応用に取り組んでいる。講演では、我々が行っているAAVベクターの研究とその成果を、中枢神経系遺伝子導入ベクター開発に焦点を当てて紹介、解説する。

世話人: 〇小澤 敬也(病院長、遺伝子治療開発分野・教授)
  北村 俊雄(細胞療法分野・教授)