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性ホルモン結合グロブリン (SHBG) の新たな生理活性に関する研究

学友会セミナー

学友会セミナー:2017年01月25日

開催日時: 2017年01月25日 15:00 ~ 16:00
開催場所: 病院棟8階 小会議室
講師: 山崎 広貴
所属: 公益財団法人朝日生命成人病研究所 主任研究員
演題: 性ホルモン結合グロブリン (SHBG) の新たな生理活性に関する研究
概要:

性ホルモン結合グロブリン (Sex Hormone-Binding Globulin; SHBG) は、主に肝臓で合成され血中に分泌される糖蛋白であり、従来性ホルモンのキャリアとして働くと考えられてきた。しかし、近年、SHBGの血中濃度が肥満や糖・脂質代謝の指標と関連し、糖尿病や脂質異常症の病態マーカーとして有用であるとともに、それ自体が糖・脂質代謝調節作用を有する可能性が指摘されている (N Engl J Med 2009; 361:1152-63、N Engl J Med 2009; 361:2675-2678など)。
発表者らは、各種培養細胞を用いてSHBG蛋白の糖・脂質代謝に与える影響を解析し、SHBG蛋白が脂肪細胞における脂肪分解を亢進させ脂肪細胞を縮小させることを見出した。さらに、SHBG蛋白は脂肪細胞における脂質代謝関連遺伝子発現に性ホルモン非存在下においても影響することから、SHBG蛋白自体が糖・脂質代謝調節作用を有すると考えている。また、SHBG蛋白が脂肪細胞やマクロファージにおいて炎症性サイトカインの発現を減少させることをも見出し、SHBG蛋白が慢性炎症の制御を介して肥満や動脈硬化などに関与している可能性を示唆した。今後、その作用機序を分子レベルで究明するとともに、各種病態モデルを用いて個体レベルにおけるSHBG蛋白のはたらきを明らかにしたい。最近、SHBGが癌や全身性炎症性疾患と関連することを示す証左も蓄積しており、将来的には、SHBG下流のシグナルやSHBG受容体の同定によって、糖・脂質代謝異常症、癌、全身性炎症性疾患の新たな予防・治療戦略創出への展開が期待されている。

世話人: ○東條 有伸 (先端医療研究センター)
 田中 廣壽 (附属病院抗体・ワクチンセンター)