English
Top

細胞系譜解析からみた成体幹細胞の発生、維持とがん化について

学友会セミナー

学友会セミナー:2016年06月28日

開催日時: 2016年06月28日 17:00~18:30
開催場所: 2号館 小講義室
講師: 上野 博夫
所属: 関西医科大学 病理学第一講座・教授
演題: 細胞系譜解析からみた成体幹細胞の発生、維持とがん化について
概要:

成体組織特異的幹細胞研究は、再生医療への応用だけでなく、生体内においてがん化、老化、障害再生等の重要な生命現象の鍵となる機能を担っており、そうした現象のメカニズム解明のためにも、極めて重要である。しかしながら、成体組織特異的幹細胞の内、解析の進んでいるものは骨髄内造血幹細胞、腸上皮幹細胞、皮膚幹細胞、神経幹細胞、精巣生殖幹細胞など比較的細胞代謝の早い一部に過ぎない。一方細胞代謝の遅い臓器など、解析の難しさからこれまで組織幹細胞の同定そのものがなされていない臓器や解析が進んでおらず幹細胞の性質がよくわかっていない臓器は多く存在している。しかしそうした解析の進んでいない臓器、組織の中にも悪性腫瘍の頻度等から重要なものは多く残されており、近年一部のがんの分子標的療法など先端治療法が開発される状況において、治療可能な悪性腫瘍のレパートリーを増やして行くためにも、各組織における成体幹細胞の同定と機能解析、遺伝子発現プロファイルの解析などの重要性が改めて注目されているところである。
 
演者は2006年以降テトラキメラ法、レインボーマウスといった多色細胞系譜追跡法を開発して幹細胞の発生および成体における維持機構、がん化機構について解析を行ってきた。こうした多色細胞系譜追跡法の大きな利点の一つは幹細胞の存在だけでなく、幹細胞のクローナリティをin vivo、in situにて容易に視覚化できる点にある。さらにオルガノイド培養などを組み合わせればin vitroにて、また組織によっては生体外より直接time lapse imagingにて幹細胞の動態解析が可能である。演者はこうした方法論を用いて各種成体組織幹細胞の維持機構、がん化におけるその破綻について解析を加えて来た。また、これらの方法にて新しい成体幹細胞の同定にも成功している。本講演にては演者の研究室で同定された舌上皮幹細胞をモデルとして取り上げ、これら新しい研究の流れと現状について紹介したい。

世話人: ○北村 俊雄
 中西 真