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転写調節機構の統計的解釈

学友会セミナー

学友会セミナー:2016年03月16日

開催日時: 2016年03月16日 17:30~18:30
開催場所: 1号館2階会議室
講師: 今清水 正彦
所属: 千葉大学真菌医学研究センター 真菌症研究部門 微生物資源分野
微生物創生プロジェクト・特任助教
演題: 転写調節機構の統計的解釈
~コンセンサス配列でわかること、わからないこと~
概要:

転写反応におけるRNAポリメラーゼ(RNAP)は、電車が均質な単位から成るレール上を走るのとは異なり、不均質なATGCの組み合わせからなるDNA配列上を走る。その結果、転写伸長のスピードは配列依存的に変化し、ある配列上では一時停止することがある。この配列依存的な一時停止は、開いたクロマチン状態の維持や環境シグナルに即応した伸長再開のように、重要な生物学的機能を担う。一方、伸長停止したRNAPは、複製中のDNAポリメラーゼと衝突して二本鎖DNAの切断を誘起し、疾患や加齢に繋がることも知られる。
我々は、ハイスループットシーケンス法を駆使して転写機構を統計的に評価する手法を複数開発し、転写機構分野に残された幾つかの問題を解決してきた。具体的には、10-5という極めて低頻度で起こる転写エラーの変化を、直接検出・統計評価する方法を確立し、転写エラーの配列嗜好性と伸長停止への寄与を明らかにした。また、転写エラーと一時停止をゲノムワイドに同時検出する方法を確立し、両者がCpG配列の柔軟な糖リン酸骨格に基づいた機構によって起こることを明らかにした。さらに、統計力学モデリングによって、転写調節の分子機構を熱揺らぎの効果を加味して評価できるようにした 。これにより、RNAPの一時停止が、RNAPとコンセンサス配列の特異的相互作用だけでは決まらず、DNA配列の反復要素に依存して(熱揺らぎに依ってRNAP-DNA複合体のコンフォメーション多様性が増幅し)、転写の一時停止が安定化することを明らかにした。熱揺らぎはランダムでも、DNA配列に反復要素という規則性の違いがあるため、熱揺らぎに依存する転写の一時停止の「大まかな」運命はDNA配列反復性の高低で予測できる。ゲノムDNA配列の反復性と、熱揺らぎを利用する転写調節機構が結びつくのである。

世話人: ○武川睦寛(分子シグナル制御分野)
 真鍋俊也(神経ネットワーク分野)