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筋ジストロフィー患者における心血管合併症の現状と治療展望

学友会セミナー

学友会セミナー:2016年02月16日

開催日時: 2016年02月16日 18:30 ~ 19:30
開催場所: 病院棟 8階南会議室
講師: 木村 公一

所属: 東京大学医学部附属病院 循環器内科
演題: 筋ジストロフィー患者における心血管合併症の現状と治療展望
概要:

筋ジストロフィーは骨格筋を主病変とする指定難病であるが、その病変は心筋に及び、二次性心筋症をきたす代表的疾患として知られている。筋ジストロフィーの大部分を占めるのがデュシェンヌ型で、X染色体劣性遺伝形式をとり男児3500出生に1例の頻度で発症、患者の細胞骨格を構成するジストロフィン蛋白が欠損するために進行性の筋破壊や筋萎縮をきたすことが明らかにされている。その病状経過は、幼少時より歩行障害が出現、10歳頃から歩行困難となり、20歳頃には長期臥床となり入院生活を余儀なくされることが一般的である。かつては呼吸筋障害により成人に至る前に死亡することが多かったが、人工呼吸管理の進歩により生命予後は飛躍的に改善した。呼吸不全死の減少と寿命の延長に伴い、心不全・不整脈・突然死が死因の半数以上を占める最も主要な死因となり、患者に必発する心合併症の解決が喫緊の課題となっている。
 一方で筋ジストロフィーは比較的まれな遺伝性疾患であり、それを専門とする小児科医と神経内科医による長期管理が必要になることから、診療経験がある循環器医が非常に少なく、日本循環器学会ガイドラインの記載にも誤りが目立つ。合併する心血管障害の病態把握や治療研究が遅れていることは深刻な問題であり、私は複数の診療拠点病院やナショナルセンター研究所と連携してその解決を目指している。本セミナーでは、現在進めている新しい超音波診断の臨床応用やモデル動物の実験に触れながら、筋ジストロフィー合併心血管障害の現状と治療展望について紹介させていただきたい。

世話人: ○小澤 敬也
 東條 有伸