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自殺遺伝子導入セントラルメモリーTリンパ球を用いたドナーTリンパ球輸注療法の開発

学友会セミナー

学友会セミナー:2008年02月26日

開催日時: 2008年02月26日 18:00~19:00
開催場所: 1号館2階会議室
講師: 金子 新 博士
所属: サンラファエレ科学研究所
演題: 自殺遺伝子導入セントラルメモリーTリンパ球を用いたドナーTリンパ球輸注療法の開発
    ~強力な同種抗原反応性を、より安全に付与するアプローチ~
概要:

白血病に対する同種造血幹細胞移植後に、移植片対白血病効果(Graft versus Leukemia effect: GVL)を最大に得つつも移植片対宿主病(Graft versus Host Disease: GVHD)の重篤化を抑えることを目的として、我々はガンシクロビル(GCV)依存性に特異的細胞死を誘導するヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ遺伝子を導入したドナーTリンパ球輸注療法(TK-DLI)を開発してきた。複数の症例においてTK-DLIによるGVL誘導とGCV投与時のGVHD鎮静化が確認されたが(Bonini C et al 1997, Ciceri F et al 2007)、輸注後の遺伝子導入Tリンパ球(TK –Tリンパ球)は抗原刺激に対する増殖性を減じたCD45RA-CD62L- エフェクターメモリーTリンパ球(TEM)であり、遺伝子導入のための体外操作の過程でTEMへの分化と抗原反応性の減弱が起きたことを確認した。そこで我々はCD28を介した副刺激シグナルならびにメモリーTリンパ球の分化や維持に中心的な役割を果たすIL-7,IL-15の有用性に着目し、抗CD3抗体と高濃度IL-2を用いる従来の方法に変えて、抗CD3/28抗体結合磁気ビーズと低濃度IL-7,IL-15を併用することで、抗原反応性と増殖性に富むCD45RA-CD62L+セントラルメモリー (CM) TK-Tリンパ球を作り出すことに成功した。CM TK-Tリンパ球はin vitroでの同種抗原刺激に対し優れた増殖性を示し、複数分裂後もCM Tリンパ球のマーカーであるCCR7、CD62Lおよび長期生存メモリーTリンパ球マーカーであるIL-7Rαを維持していた。ヒト皮膚移植NOD/SCIDマウスモデルへの輸注実験ではCM TK-Tリンパ球は高い血中キメリズムとCD4/8比、そして同種ヒト皮膚への著しい浸潤(allo skin GVHD)を示し、そのallo GVHDはGCV投与により速やかに鎮静化した。本手法で樹立されたCM TK-Tリンパ球は優れたGVLを期待しうる同種抗原反応性を保ちつつも、GVHDを安全に沈静化させるGCV感受性を保持しており、CM TK-Tリンパ球を用いたTK-DLIは同種移植後再発白血病の治療成績向上に繋がる可能性がある。

世話人: ○中内啓光(75330)、田原秀晃