全身性自己免疫マウスにおける自己抗体産生に対するT細胞の役割と腸内細菌の関与
学友会セミナー
学友会セミナー:2015年11月30日
開催日時: | 2015年11月30日 18:00-18:40 |
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開催場所: | 東京大学医科学研究所 2号館 2階 小講義室 |
講師: | 江里 俊樹 博士 |
所属: | 東京大学医学部附属病院 アレルギー・リウマチ内科 特任臨床医 |
演題: | 全身性自己免疫マウスにおける自己抗体産生に対するT細胞の役割と腸内細菌の関与 |
概要: | 自己免疫疾患の病因はいまだに不明であり、これらの疾患の特徴である自己抗体の産生機序も解明されていない。リンパ球減少は、SLEをはじめとする自己免疫疾患で見られる他、ウイルス感染や加齢等でも生理的に生じるが、リンパ球減少時に末梢で生じる生理的なリンパ球増殖反応(Lymphopenia-induced proliferation; LIP)が、自己免疫発症機序の一つと考えられている。発表者はこのLIPに注目し、T細胞不全マウスにT細胞を移入することで胃炎等を誘導する自己免疫マウスモデルを用いて、LIPにより濾胞ヘルパーT細胞の分化が誘導され、抗核抗体等の自己抗体産生が促進されることを明らかにした。また、経口抗生剤を用いた腸管滅菌により濾胞ヘルパーT細胞の誘導および自己抗体産生が抑制されることを示し、本経路における腸内細菌の存在の重要性を明らかにした。さらに他の自然発症ループスモデルマウスにおいても腸管滅菌が同様に自己抗体産生や腎炎発症を抑制することを明らかにし、LIPのみならず自己免疫の発症機序に関わる経路に腸内細菌が関与している可能性を示した。腸内細菌と疾患や免疫恒常性維持との関連は近年世界的にも特に注目を浴びている分野であり、本研究は全身性自己免疫疾患に対する腸内細菌を標的とした治療の可能性を示すものといえる。今後、マウスモデルを用いて獲得免疫、自然免疫の両者の観点から自己免疫疾患発症機序を探るとともに、腸内細菌変化について微生物学的解析を加えて疾患発症に関わる微生物群を同定し、腸内細菌をターゲットとした新規自己免疫疾患治療法を確立することをめざしている。 |
世話人: | ○東條 有伸(附属病院副病院長、教授)
田中 廣壽(アレルギー免疫科診療科長、教授) |