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遺伝子改変技術を用いたモデルマウスの作製とヒト疾患への応用

学友会セミナー

学友会セミナー:2015年09月18日

開催日時: 2015年09月18日 10:00-11:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 2号館 2階 小講義室
講師: 中西 友子 博士
所属: 東京大学医科学研究所 実験動物研究施設・特任研究員
演題: 遺伝子改変技術を用いたモデルマウスの作製とヒト疾患への応用
概要:

ポストゲノム時代の生命科学研究では、膨大な遺伝情報を生命現象やヒト疾患と結びつけるために、個体レベルで遺伝子機能を解析する手法や遺伝子改変動物の開発が必要不可欠である。
これまでに演者は、性染色体にGFP遺伝子を導入して、着床前に雌雄胚を簡便に判別することを目的に、142ラインものトランスジェニックマウスを作製し、バンク化している。この経験を活かし、遺伝子改変動物の作製技術を利用しながら、その応用として新しい解析システムを構築してきた。具体的には、受精および初期胚発生で必須なX染色体不活性化現象を可視化するシステムを確立したり、高齢化社会の課題の一つである骨粗鬆症の治療・予防法の開発を目指して、個体レベルでヒト骨形成活性を評価できるマウスを作製してきた。
また最近では、免疫系ヒト化マウスの作製に向けて、重症な免疫不全を呈するNSGマウスのCRISPR/Cas9による遺伝子改変システムを確立している。NSGマウスは、他系統で用いられる常法で受精卵を得ることが非常に困難であり、ES細胞も不安定であるため、遺伝子改変は、他系統で一度確立したのち、戻し交配によりNSGマウスに導入する方法が用いられてきた。しかし、この方法では多くの時間と多大な労力が必要なため、演者は体外受精による受精卵作製とCRISPR/Cas9のマイクロインジェクションを組み合わせて、直接NSGマウス系統の遺伝子改変を行うことを考えた。現在すでにNSGマウスにおいてMHC class I/IIの多重ノックアウトに成功しており、今後、移植する血液幹細胞と合ったHLAハプロタイプを更に導入することで、マウス体内でのヒトの免疫システムの構築が可能になる。このマウスは、血球系ウイルス感染やがん研究など、多くの分野に役立つと期待できる。

世話人: ○真鍋 俊也(神経ネットワーク分野・教授)
 斎藤 泉(遺伝子解析施設・教授)