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ゲートウェイ反射、神経シグナルによる炎症制御

学友会セミナー

学友会セミナー:2015年09月18日

開催日時: 2015年09月18日 17:00-18:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 総合研究棟 4階 セミナー室
(入棟時、正面玄関で内線75272をお呼び出しください。)
講師: 村上 正晃 先生 
所属: 北海道大学遺伝子病制御研究所 大学院医学研究科
分子神経免疫学分野 教授
演題: ゲートウェイ反射、神経シグナルによる炎症制御
概要:

私たちは、“局所の神経経路の活性化”(神経シグナル)が特定の血管でケモカイン遊走因子を産生して免疫細胞をよび寄せての血液脳関門に免疫細胞の侵入口をつくること、もし、血液中に中枢神経系の抗原を認識する自己反応性T細胞が存在すれば、この部位に集まって、中枢神経系に侵入して多発性硬化症様の炎症性疾患を誘導することを明らかにした。定常状態の侵入口は、第5腰髄の背側血管にあり、その形成は重力刺激に伴うヒラメ筋の活性化に端を発する神経シグナルに依存していた。また、痛みに端を発する別の神経シグナルは、別の部位の血管に侵入口を形成して多発性硬化症モデルの再発を誘導した。さらに、人為的な神経シグナルの導入でも特定血管に侵入口を形成できた。具体的には、大腿四頭筋由来の神経シグナルは第3腰髄の背側血管に、上腕三頭筋由来の神経シグナルは第5頚髄付近の背側血管に侵入口をつくった。
私たちは、これら血管への免疫細胞の侵入口の形成メカニズムとして、血管内皮細胞でのケモカイン遊走因子の過剰産生機構“炎症回路”を見いだした。血管内皮細胞で2つの転写因子、NFkBとSTAT3が同時に活性化すれば過剰量のケモカイン遊走因子、増殖因子などが局所的に産生され、多くの免疫細胞が集積して、局所の恒常性をみだして、病気、病態を誘導する。神経シグナルは、ノルアドレナリンやATPなどの神経伝達物質を特定血管の局所にて誘導し、その場の炎症回路を過剰に活性化して免疫細胞の侵入口を形成する。
私たちは、神経シグナルの活性化に伴う特定血管の免疫細胞侵入口の形成機構を“ゲートウェイ反射”とよんで研究を続けている。過剰な炎症は組織障害を引き起こし、適度な炎症は組織の修復を誘導するので、人為的な神経シグナルによるゲートウェイ反射の活性化のオンとオフの制御が、脊髄を含む中枢神経系の病気、病態の人為的制御につながると考えている。

世話人: ○清野 宏(炎症免疫学分野・教授)
 河岡 義裕(ウイルス感染分野・教授)