Immuno-oncology:
学友会セミナー:2015年09月25日
開催日時: | 2015年09月25日 17:00-18:00 |
---|---|
開催場所: | 東京大学医科学研究所 1号館 2階 会議室 |
講師: | 平野 直人 博士 |
所属: | Senior Scientist
Associate Director for Research, Tumor Immunotherapy Program, Princess Margaret Cancer Centre |
演題: | Immuno-oncology:
Development of safer and more effective immunotherapy for cancer |
概要: | がんに対する免疫療法 (immune therapy) は、大きくワクチン、サイトカイン、抗体、細胞療法に分けられる。最近の抗体、細胞療法のめざましい発展は、今後免疫療法ががん治療の本流のひとつとなる可能性を示唆する。しかし他のがん治療法と同様に、免疫療法も多くの場合単独ではその効果は充分ではなく、また時に重篤な免疫学的有害事象を伴う。より安全で効果的な免疫併用療法の開発が肝要である。T細胞療法 (adoptive T cell therapy) の目的は、体外で増幅した抗腫瘍T細胞を輸注することにより、持続的な抗腫瘍効果をもたらすことが出来る免疫記憶を患者体内に樹立することである。我々は、高性能な抗腫瘍T細胞を体外で効率よく増幅するためのヒト人工抗原提示細胞を開発した。このヒト人工抗原提示細胞を利用して体外で増幅した抗腫瘍T細胞を進行期悪性黒色腫患者に輸注すると、患者体内に抗腫瘍免疫記憶が樹立され、持続的な臨床効果が見られた。そして免疫チェックポイント遮断抗体の一つである抗CTLA4抗体 (ipilimimab) を併用するとさらにその効果が増強され、重篤な有害事象は認められなかった (Butler et al., Sci Transl Med. 2011; Butler and Hirano, Immunol Rev. 2014)。この結果は、我々の人工抗原提示細胞の臨床的有用性を示すとともに、免疫T細胞療法と免疫チェックポイント遮断抗体療法との併用が有効であることを示す。さらなる臨床効果の向上を目指し、人工抗原提示細胞を使ったT細胞療法と抗PD1抗体 (pembrolizumab) の併用療法の臨床試験を現在進めている。一方、免疫T細胞療法の効果を向上させるために、外来性にT細胞受容体 (T cell receptor) 遺伝子や、キメラ抗原受容体 (chimeric antigen receptor) を遺伝子導入した高性能抗腫瘍T細胞を使ったT細胞遺伝子療法も、臨床試験が行われている。一部のがんで著効を認めているが、致死性の免疫学的有害事象も見られている。より安全で効果的なT細胞遺伝子療法を目指した我々の最近の研究 (Nakatsugawa et al., J Immunol. 2015; Ochi et al., Cancer Immunol Res. 2015) を紹介する。免疫療法をがんに対する標準治療の一つとするために我々が行っているヒトレベルでの基礎研究、橋渡し研究、臨床研究を広く紹介したい。 |
世話人: | ○小澤 敬也(病院長、遺伝子治療開発分野・教授)
東條 有伸(分子療法分野・教授) |