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リウマチ膠原病診療における難治性病態とステロイド療法副作用の克服へのアプローチ

学友会セミナー

学友会セミナー:2015年07月08日

開催日時: 2015年07月08日 17:30-18:30
開催場所: 東京大学医科学研究所 1号館 2階 セミナー室
講師: 吉川 賢忠 博士
所属: 附属病院 アレルギー免疫科・助教
演題: リウマチ膠原病診療における難治性病態とステロイド療法副作用の克服へのアプローチ
概要:

生命医科学の進歩を背景としたTNF阻害薬などの生物学的製剤の登場は、関節リウマチ診療にパラダイムシフトをもたらし、寛解導入の達成が今や明確な治療目標となった。しかし、生物学的製剤投与困難症例やノンレスポンダーの存在、中止後の高い再燃率など、新たな課題も多い。SLE、強皮症などの膠原病診療においては難治性合併症を含め根本的解決方法はいまだ示されていない。さらに、高齢化による病態の複雑化などから、新規治療方法の創成のみならず症例毎の精緻かつ包括的な診療がますます必要となっている。
 わたしは、臨床面では、当院アレルギー免疫科における病病連携や多職種連携を基盤としたリウマチ膠原病診療体制構築、次代のリウマチ膠原病専門医育成に携わっている。一方、研究面では、リウマチ膠原病の難治性病態と今もなお汎用されているステロイドの副作用の克服をめざしている。
 これまで、膠原病性肺高血圧症に着目し、心肥大抑制作用を有する核蛋白質HEXIM1を標的とした右心リモデリング抑制療法を提案している。また、ステロイド受容体(グルココルチコイドレセプター、GR)による転写制御機構の解明に取り組み、GRと他のストレス応答系のクロストーク解明、新規GR相互作用蛋白質・標的遺伝子同定、副作用分離型の作用選択的GR修飾薬創成の分子基盤構築、などの基礎的成果を積み上げた。近年、それらの成果を基盤に一部の研究を橋渡し研究へと発展させている。すなわち、ステロイド誘発性筋萎縮の分子機構を明らかにし、分岐鎖アミノ酸を用いた医師主導型臨床試験を実施した。また、GR研究の過程で、「骨格筋-肝-脂肪間代謝ネットワーク」を発見し、新規抗肥満・生活習慣病の予防法・治療法開発の足がかりとなる成果も得ている。

世話人: ○小澤 敬也(附属病院長)
 田中 廣壽(免疫病治療学分野・教授、アレルギー免疫科・診療科長)