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膠芽腫の治療戦略 ― 放射線治療の工夫とウイルス療法の開発

学友会セミナー

学友会セミナー:2015年03月11日

開催日時: 2015年03月11日 16:00-17:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 2号館 2階 小講義室
講師: 田中 実
所属: 東京大学医科学研究所 先端がん治療分野・特任講師
演題: 膠芽腫の治療戦略 ― 放射線治療の工夫とウイルス療法の開発
Therapeutic options for patients with glioblastoma
概要:

膠芽腫(grade4)は悪性神経膠腫の中でも特に予後不良であり、従来の手術、放射線治療、化学療法といった集学的治療では満足のいく治療成績は得られない。我々はこれまで、膠芽腫の初発例、再発例を問わず治療成績の向上のためにさまざまな治療戦略を試み、特に放射線治療の工夫に力を注いできた。
膠芽腫は増殖速度が速く、神経線維の走行に沿って早期に脳深部へと浸潤していき、放射線抵抗性も高く、術後の分割照射の場合、腫瘍の増殖制御には少なくとも75Gy以上の線量が必要とされる。一方、正常脳の耐容線量は一般に、全脳照射で40Gy、局所照射で60Gyと規定されることが多い。1990-2002年東大病院では、浸潤先の腫瘍も含めるように照射範囲を工夫した上で、総線量80-90Gyの高線量照射を施行した。Retrospectiveな解析では、初発膠芽腫において60Gyと比較して有意な生存期間の延長が得られている。
2005年以降、初発の膠芽腫に対してテモゾロミドを用いた放射線化学療法が標準的治療となった。我々はこれに先行して2003年からテモゾロミド維持療法を開始し、初期治療としてテモゾロミドを併用した80Gyの高線量照射とテモゾロミドの維持療法を可能な限り長期に継続してきており、良好な成績が得られつつある。膠芽腫は再発が必至であるが、我々は早期に再発を発見し、広範囲定位放射線治療(extended field stereotactic radiosurgery)を施行している。我々は新規治療法として人為的三重変異を有する単純ヘルペスウイルス1型である第三世代がん治療用ウイルスG47Δの臨床開発を進めてきた。再発膠芽腫に対して行われたG47Δのfirst-in-man臨床試験では、重篤な有害事象はなく、安全に脳腫瘍内に投与できることが確認された。現在進行中の医師主導治験(第Ⅱ相)では膠芽腫に対するG47Δの有効性を検討する。

世話人: ○東條 有伸(分子療法分野・教授)
 藤堂 具紀(先端がん治療分野・教授)田中 実