齧歯類体内時計の光同調および非光同調の分子メカニズムとそれらの相互作用に関する研究
学友会セミナー:2015年02月17日
開催日時: | 2015年02月17日 15:00-16:00 |
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開催場所: | 東京大学医科学研究所 2号館 2階 小講義室 |
講師: | 横田 伸一 |
所属: | 早稲田大学先端科学・健康医療融合研究機構 招聘研究員 |
演題: | 齧歯類体内時計の光同調および非光同調の分子メカニズムとそれらの相互作用に関する研究 |
概要: | 齧歯類の体内時計は光刺激によりリセットされるが、GABA/ベンゾジアゼピン系化合物やセロトニン受容体刺激薬でも同様の現象が誘導される。前者は光同調、後者は非光同調と呼ばれている。光同調は夜間に作用し、視交叉上核(SCN)では時計遺伝子Per1、Per2の発現上昇がみられるが、一方の非光同調は昼間に作用し、逆にPer1、Per2発現の低下が起こる。しかしながら、これらの遺伝子発現に関わる細胞内シグナル伝達機構は不明であった。光刺激後、SCNで最初に起こる変化はCa2+濃度の上昇であるため、Ca2+/カルモジュリン依存性キナーゼのひとつであるCaMKIIに着目し、その関与の可能性について検討した。光照射後、SCNでは迅速なCaMKIIのリン酸化が観察された。CaMKII阻害薬の脳室内への投与はSCNのPer1、Per2の発現上昇を減弱させるとともに、行動リズムの位相変化も抑制した。以上の結果より、光同調の分子機構の一端を解明した。また、光同調と非光同調が互いに抑制し合う分子メカニズムについても、ベンゾジアゼピン系睡眠導入薬ブロチゾラム(BRZ)の前投与が、光照射による行動リズムの位相変化とPer1、Per2の発現上昇に対し、どのように作用するかを解析した。その結果、光照射による行動リズムの位相前進とSCNでのPer1、Per2の発現上昇はいずれもBRZによって拮抗された。行動上に現れる光同調と非光同調の相互作用は、SCNでのPer1、Per2の発現量の相殺で説明できる可能性が明らかとなった。また、時計遺伝子変異マウスでTh2型皮膚アレルギー病態が増悪することも見いだしており、本セミナーでは、時間栄養学的観点からの非アルコール性脂肪肝などの慢性代謝病の病態解明の研究なども紹介する。 |
世話人: | ○吉田 進昭(発生工学研究分野・教授)
村上 善則(人癌病因遺伝子分野・教授) |