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IL7Rα鎖の機能獲得型変異による造血幹・前駆細胞の形質転換

学友会セミナー

学友会セミナー:2015年01月05日

開催日時: 2015年01月05日 15:00-16:00
開催場所: 病院A棟 8階 南会議室
講師: 横山 和明 博士
所属: 附属病院 血液腫瘍内科・医員
演題: IL7Rα鎖の機能獲得型変異による造血幹・前駆細胞の形質転換
概要:

T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)は、未熟なTリンパ球が増殖する稀な白血病の一病型である。T細胞の生存・分化・増殖因子であるインターロイキン7(IL7)のシグナルがT-ALLの分子病態に関与する可能性が指摘されているため、IL7受容体α鎖(IL7Rα)の塩基配列を解析した結果、ヒトT-ALL細胞株DND-41においてCysを含む4アミノ酸の膜貫通領域への挿入変異(INSα鎖)を見出した。INSα鎖は試験管内でリガンド非依存的に2~多量体を形成する機能獲得型変異体であり、Jak1とJak3 を利用する生理的なIL7シグナルと異なり、Jak1のみが下流へのシグナル伝達を媒介すると考えられた。INSα鎖を強制発現させたマウス骨髄・胎仔肝由来Lin-細胞の移植実験では、約半年の観察期間中急性白血病の発症は認めず、末梢血・骨髄・脾臓は骨髄増殖性腫瘍類似の所見を呈した。一方、INSα鎖を変異型Notch1と共発現させるとT-ALLを発症した。さらに、INSα鎖を発現させたCLPはOP9細胞との共培養でB220+B前駆細胞となり、同系マウスへの移植2ヶ月後の骨髄・脾臓はB細胞性白血病/リンパ腫の像を呈した。以上より、INSα鎖を発現するマウス造血前駆細胞の分化段階と変異型 Notch1 の有無によって異なる形質の白血病が生じることが示された。造血前駆細胞の形質転換に伴う発現プロフィルの変化も併せて紹介する。

世話人: ○東條 有伸(分子療法分野・教授)
 小澤 敬也(遺伝子治療開発分野・教授)