Tリンパ球のレパトアを形成する胸腺微小環境
学友会セミナー:2014年06月20日
開催日時: | 2014年06月20日 13:00-14:00 |
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開催場所: | 東京大学医科学研究所 2号館 2階 小講義室 |
講師: | 髙濱 洋介 |
所属: | 徳島大学 疾患プロテオゲノム研究センター・教授 |
演題: | Tリンパ球のレパトアを形成する胸腺微小環境
T cell repertoire formation in the thymus microenvironments |
概要: | 免疫応答の司令塔として生体防御の中心的役割を担うTリンパ球は、造血幹細胞に由来し胸腺にて分化する。胸腺におけるTリンパ球の分化過程には、生体にとって有用な幼若Tリンパ球だけが成熟を許される「レパトア形成」のプロセスが内包されている。正の選択、負の選択、制御性T細胞の生成、から主として構成される胸腺内レパトア形成は、「自己と非自己を識別し外来非自己のみ攻撃する」という、私たち人間が地球上で健康に生きていくために必要な免疫システムの根幹的性状の確立に不可欠である。Tリンパ球レパトア形成の分子機構解明に向けた研究は、先天的なゲノム情報の限界を超越して多様な外部情報に適応する生体の頑強性と適応性の理解という観点から興味深い。一方、Tリンパ球を含む血液系細胞の生物学は解明が進んでいるのに対して、血液系細胞の分化や機能を制御するリンパ組織の微小環境に関する理解は遅れている。私たちは、正の選択をうけて成熟するTリンパ球が胸腺皮質から髄質へと移動するには髄質上皮細胞に発現されるCCR7ケモカインシグナルが必須であり、ケモカインによる血液系細胞の髄質移動が負の選択と制御性T細胞の生成による中枢性自己寛容の確立に不可欠であることを明らかにするとともに、自己寛容確立を担う胸腺髄質の形成がレパトア形成途上のTリンパ球由来サイトカインRANKLによって制御されていることを明らかにしてきた。また、胸腺皮質上皮細胞特異的な構成鎖beta5tを含むプロテアソームがCD8陽性キラーT細胞の正の選択に必要であることを見出した。胸腺上皮細胞とその亜集団に焦点をあてて免疫微小環境の分子本態解明を目指す研究は、血液系細胞に注目して進められてきた従来の免疫学研究から明らかにされることのなかった、免疫システム理解の新機軸と免疫疾患の画期的制御法開発の基盤になると期待される。 |
世話人: | ○北村 俊雄(細胞療法分野・教授)
三宅 健介(感染遺伝学分野・教授) |