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新規がん抑制遺伝子FLCNの機能解析

学友会セミナー

学友会セミナー:2014年07月02日

開催日時: 2014年07月02日 17:00-18:00
開催場所: 1号館 講堂
講師: 馬場 理也
所属: 熊本大学大学院先導機構 国際先端医学研究拠点施設・准教授
演題: 新規がん抑制遺伝子FLCNの機能解析
概要:

FLCNは遺伝性過誤腫症候群であるBirt Hogg Dubé Sydrome (BHDS) の責任遺伝子として、2002年にクローニングされた新規遺伝子である。BHDSは腎腫瘍、皮膚の過誤腫、肺の嚢胞を3主徴とする常染色体優性の遺伝病であり、FLCNに機能欠損型の胚細胞変異を持つ。腎腫瘍ではさらに対立遺伝子の欠失または変異を認め、FLCNはKnudsonのtwo-hit theoryに従う古典的ながん抑制遺伝子である。FLCN がコードするタンパク質(FLCN)は、579アミノ酸からなる既知のドメイン構造を持たない機能未知の蛋白質である。一方で、線虫、ショウジョウバエから哺乳類に至るまで保存されていることなどから、がん抑制遺伝子としてのみならず、広く生体において重要な役割を果たしている可能性が示唆されていた。
演者らはこれまで、FLCN結合タンパク質のクローニングとその遺伝子改変マウスを用いた解析を通して、FLCNの機能解析を行ってきた。その結果、互いに相同性があり(Identity:49%, Similarity:74%)、機能未知で既知のドメイン構造を持たない新規のFLCN結合蛋白質FNIP1, FNIP2を同定した。また、FLCNはFNIP1並びにFNIP2 (FNIPs)を介して、エネルギー感知スイッチの役割を果たす5’-AMP-activated protein kinase (AMPK)と結合し、FNIP1とともにリン酸化を受けることから、生体の代謝の調節に関与することが示唆された。さらに遺伝子改変マウスの解析により、実際にFLCNとFNIPsは生体の代謝調節に関与し、様々な生命現象において非常に重要な役割を果たしていることが明らかとなってきている。なかでもFlcn/Fnipsは転写コアクチベーターであるPGC1-の発現を介して、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化を制御しており、PGC1-の活性はFlcn欠損腎臓上皮細胞の悪性化に関与することが示唆されている。
本セミナーでは、FLCN, FNIPsの生体における多様な役割を示す。更に、FLCNのがん抑制遺伝子としての側面について、最新の知見を交えて紹介したい。

世話人: 〇井上純一郎(分子発癌分野・教授)
山梨裕司(腫瘍抑制分野・教授)