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Gd-EOB-DTPAを用いた肝機能の評価および肝細胞癌の診断

学友会セミナー

学友会セミナー:2013年12月27日

開催日時: 2013年12月27日 15:00-16:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 1号館 2階 会議室
講師: 赤井 宏行 博士
所属: 東京警察病院 放射線科・医員
演題: Gd-EOB-DTPAを用いた肝機能の評価および肝細胞癌の診断
概要:

この数十年の間、様々な肝特異性のMRI造影剤が開発および臨床使用されてきており、そのうち親油性をもつGd-DTPAの修飾体であるGd-EOB-DTPAは最近開発されたものである。Gd-EOB-DTPAは全体としては親水性であるが、脂溶性側鎖であるエトキシベンジル基を有している。そのため、静注後早期は通常の細胞外液性造影剤と同様に血行動態の把握が可能であり、その後は類洞側から肝細胞へと移行するために、然るべきタイミングにて撮影を行えば、肝細胞に特異的に造影剤が取り込まれているため肝実質と病変が高いコントラストを示す撮影(通常、肝胆道相と呼ばれる)が可能である。
本セミナーでは、このGd-EOB-DTPAを用いて次の三項目に関する我々の研究結果を紹介したい。
1) Gd-EOB-DTPAの取り込みと肝機能の相関について
2) Gd-EOB-DTPA造影MRIを用いた肝細胞癌の検出について
3) Gd-EOB-DTPA造影MRI肝胆道相にて同定される低信号結節の意義について
1)の検討においては、正常肝機能患者は慢性肝機能患者と比較してGd-EOB-DTPAの取り込みが有意に高く、人体においてGd-EOB-DTPAの取り込みがICG-R15値と相関することが確認された。これは、肝胆道相での肝信号強度を定量的に評価することにより、肝予備能を評価できる可能性を示唆している。
2)の検討においては、Gd-EOB-DTPA造影MRIは造影64列MDCTと比較すると同等ないしそれ以上に高い感度および診断能を有していることが確認された。本邦では長らく造影MDCTが肝細胞癌診断のgold standardであったが、Gd-EOB-DTPA造影MRIがその代役となるものと思われる。
3)の検討においては、Gd-EOB-DTPA造影MRI肝胆道相にて同定される低信号結節からは、1年で3.3%、2年で14.5%の累積発生率で多血性肝癌の発生が確認された。統計的な有意差はなかったが、サイズが増大すると発生リスクが上昇していた。ただ、患者毎の解析では低信号結節以外の部位からの多血性肝癌の発生も多く、低信号結節の治療適応の検討には更なる検討が必要であると考えられた。

世話人: ○長村 文孝(先端医療開発推進分野・教授)
 桐生 茂(放射線科・准教授)