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弱毒SIV生ワクチン免疫ザルおよびSIV感染エリートコントローラーにおける細胞性免疫によるウイルス制御

学友会セミナー

学友会セミナー:2013年11月18日

開催日時: 2013年11月18日 10:00-11:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 附属病院A棟 8階 会議室(南側)
講師: 深澤 嘉伯 博士
所属: Vaccine and Gene Therapy Institute, Oregon National Primate Research Center, Oregon Health & Science University, Beaverton, Oregon, USA.
Staff Scientist
演題: 弱毒SIV生ワクチン免疫ザルおよびSIV感染エリートコントローラーにおける細胞性免疫によるウイルス制御
概要:

サル免疫不全ウイルス(SIV)を用いたサルエイズモデルにおいて弱毒SIV生ワクチンは他のワクチンよりも強毒SIV攻撃接種に対し非常に高い防御効果を示すが、その防御機序は未だ完全には解明されていない。近年、我々の研究グループはその防御効果が攻撃接種前におけるリンパ節中SIV特異的T細胞免疫反応と相関し、血液や粘膜組織中のT細胞免疫反応および血漿中抗体反応とは相関しないことを報告した。また、高い防御効果を示したサル個体群のリンパ節内では、弱毒生ワクチン株が胚中心に存在する濾胞性CD4+T細胞(TFH)において持続感染し、SIV増殖抑制能を持つエフェクターメモリーCD8+T細胞が高頻度に維持されていた。これらのことから、リンパ組織内での持続的な抗原産生により誘導される高頻度エフェクターメモリーT細胞免疫が強毒SIV感染防御/増殖抑制に有効であると考えられる。

 一方、弱毒生ワクチン免疫ザルにおいて弱毒SIVが個体内から完全に排除されていないことから、強毒SIV攻撃接種に対する強力な防御免疫誘導下であってもウイルス慢性持続感染を駆逐することは困難であると考えられる。そこで、病体を進行させる強毒SIVによる持続感染と免疫反応の関係を理解するために、ワクチンや薬剤投与無しに強毒SIVを著しく抑制している希少な個体群(エリートコントローラー)のリンパ節内におけるウイルス持続感染細胞を同定した。また、抗CD8抗体を用いたエリートコントローラーCD8+細胞枯渇実験から、細胞傷害性T細胞(CTL)とウイルス持続感染細胞の関係を解析した。その結果、エリートコントローラーのリンパ節内における強毒SIV増殖はCTLにより抑制されTFHに限局化していることが明らかとなった。これらのことから、弱毒SIV感染だけでなく、有効な細胞性免疫誘導下では強毒SIV感染においても二次リンパ組織おいてウイルス増殖が胚中心内に制御され病体進行を阻止していると考えられる。これらのことから、今後のエイズワクチン開発および治療戦略には、TFHにおけるウイルス持続感染を考慮することが重要である。

世話人: ○俣野 哲朗(附属病院 エイズワクチン開発担当分野・委嘱教授)
 川口 寧(ウイルス病態制御分野・教授)