English
Top

チロシンキナーゼ阻害薬イマチニブによるAIDの抑制

学友会セミナー

学友会セミナー:2013年10月09日

開催日時: 2013年10月09日 16:00-17:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 1号館 2階 会議室
講師: 川俣 豊隆 博士
所属: 附属病院 血液腫瘍内科
演題: チロシンキナーゼ阻害薬イマチニブによるAIDの抑制
概要:

Activation-induced cytidine deaminase (AID)は活性化B細胞における体細胞突然変異 (SHM)や、クラススイッチ組み換え(CSR)に必須の酵素であり、免疫グロブリンの多様性や抗原への高親和性をもたらす親和性成熟や、抗原特異性を変えずにサブクラスの切り替えを行なう。いっぽう、AIDの異所性発現や過剰発現が異常な体細胞突然変異や染色体転座を惹起し、腫瘍形成に関与していると指摘されている。イマチニブは、慢性骨髄性白血病発症(CML)の責任分子であるBCR-ABL遺伝子産物のチロシンキナーゼ活性を阻害する分子標的薬(TKI)であるが、イマチニブ治療中に血清免疫グロブリン値の低下をしばしば認める。また、インターフェロン治療例と比較した臨床研究ではIgGとIgA値は有意に低下しているにもかかわらず、IgM値は寧ろ増加している傾向が認められた。この現象の分子基盤の解明に取り組み、イマチニブがAIDの発現抑制を介してCSRを阻害すること、イマチニブによるAIDの発現抑制には転写因子E2Aの抑制が重要であることを明らかにした。イマチニブ以降がん・白血病を対象として各種TKIが臨床応用されており、従来の抗がん剤とは異なる予期せぬ有害事象が報告されている。このような事象の分子基盤の解明は、新たな分子間ネットワークの発見や分子標的薬の開発につながる可能性がある。

世話人: ○田中 廣壽(抗体・ワクチンセンター 教授)
 東條 有伸(分子療法分野 教授)