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真核生物におけるmRNA品質管理の分子機構

学友会セミナー

学友会セミナー:2013年09月13日

開催日時: 2013年09月13日 15:00-16:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 1号館 2階 セミナー室
講師: 鹿島 勲
所属: 東北大学大学院薬学研究科生命薬学専攻
演題: 真核生物におけるmRNA品質管理の分子機構
概要:

細胞は遺伝情報の維持・遺伝子発現の過程において多様な異常を生じる。その一方で、遺伝子発現の正確性を確保するために異常を認識し、分解もしくは修復する仕組み“品質管理機構”が細胞には備わっている。タンパク質の品質管理機構と並び、真核細胞には異常mRNAを排除するmRNA品質管理機構が存在する。このmRNA品質管理機構はリボソームによる翻訳伸長・終結での異常を感知することで、遺伝子変異やmRNA成熟過程において産生される異常mRNAを検出・分解する。
 本セミナーでは、異常な位置に終止コドンを有するmRNAを認識・分解するナンセンス依存mRNA分解(nonsense-mediated mRNA decay;NMD)の分子メカニズムに関する以下の研究を紹介する。①異常翻訳終結複合体の形成機構:異常終止コドンの認識の引き金となるPhosphatidyl inositol 3' kinase-related protein kinase(PIKK)のファミリーに属するタンパク質リン酸化酵素SMG1によるNMDのキープレイヤーUPF1の翻訳終結に伴うリン酸化の機序1)。②異常mRNAの内部切断機構:エンドヌクレアーゼSMG6による異常終止コドンを有するmRNA分解の分子機構2)。
 NMD以外のmRNA品質管理機構として、リボソームの停滞によるmRNA内部切断(No-go decay;NGD)、および終止コドンを欠失したmRNA分解(Non-stop mRNA decay;NSD)について解析が進んでいる。これらのmRNA品質管理機構において、異常mRNAの3’末端で停滞したリボソームを解離させ、異常mRNAの分解を促進する新たな翻訳因子複合体の機能についても紹介する3)。

1) Kashima, I. et al. Genes Dev. 20, 355–367 (2006).
2) Kashima, I. et al. Genes Dev. 24, 2440–2450 (2010).
3) Tsuboi, T. et al.. Mol. Cell 46, 518–529 (2012).

世話人: ○真鍋 俊也(神経ネットワーク分野 教授)
 斎藤 春雄(分子細胞情報分野 教授)