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好中球との相互作用によるマクロファージ活性化機構の解明

学友会セミナー

学友会セミナー:2013年02月01日

開催日時: 2013年02月01日 18:00-19:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 1号館 2階 会議室
講師: 小林 弘 博士
所属: 茅ヶ崎市立病院診療部リウマチ科
演題: 好中球との相互作用によるマクロファージ活性化機構の解明
概要:

リウマチ膠原病に対する生物学的製剤をはじめとした免疫抑制療法は近年著しく進歩した。しかし、副作用である感染症発症のリスクは高く、とくに、生物学的製剤治療中最も多い重篤な合併症は肺炎および敗血症である。敗血症は感染によって生じた全身性炎症反応症候群であるが、その病態は不明な点が多く時に重篤となる。従来、IRAK-M(IL-1R–associated kinase-M)は単球・マクロファージに発現する自然免疫応答を阻害する分子として注目されてきた(Cell 2002)。しかし、感染症病態におけるIRAK-Mの役割と制御機構に関しては不明な点が多い。私どもは、肺における細菌感染病態の成立機序を探る過程で、肺胞マクロファージにおいて、好中球との接触依存性にCASP6(caspase-6)が活性化されIRAK-Mが切断される、それによってIRAK-Mによる抑制が解除され肺胞マクロファージが活性化される、ことを見出した。すなわち、肺の細菌感染において、肺胞スペースに動員された好中球がマクロファージ活性化を介して局所の炎症を増幅させる機構の存在が示されたといえる。実際、CASP-6-/- マウスにおいて敗血症モデルを作成すると、野生型に比して肺におけるTNF-α産生は低く致死率も低かった。したがって、この好中球-マクロファージ間の直接相互作用による炎症の制御は、感染症の重篤化のみならず関節リウマチをはじめとした炎症性疾患の組織障害に関わっている可能性があり、新しい治療標的としてきわめて魅力的といえる。

世話人: ○東條 有伸(分子療法分野 教授)
 田中 廣壽(附属病院アレルギー免疫科 准教授)