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C型慢性肝炎から肝硬変、肝がんへ

学友会セミナー

学友会セミナー:2013年01月09日

開催日時: 2013年01月09日 18:00-19:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 1号館 2階セミナー室
講師: 加藤 直也 博士
所属: 疾患制御ゲノム医学ユニット
演題: C型慢性肝炎から肝硬変、肝がんへ
~GWASから個別化医療、そしてTRへの展望~
概要:

ウイルス肝炎はわが国の国民病とも言われ、C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus: HCV)キャリアは200万人にも及ぶ。C型肝炎の終末像は肝癌であり、毎年3万人以上もの尊い命を奪っている肝癌の原因の70%がHCVである。HCVによる肝発癌の抑止は肝臓病学の最重要課題である。
HCV感染から肝硬変、肝癌への進展には著しい個人差がある。このような肝病態進展の個人差には、一塩基多型(single nucleotide polymorphism: SNP)に代表される宿主因子が深く関与している。そこで、C型肝炎における肝硬変・肝癌に関わるSNPにつきゲノムワイド関連解析(genome wide association study: GWAS)を試みてきた。
その結果、C型肝炎においては、MHC classⅡ分子であるHLA-DQ/DRの発現量を制御する遺伝子多型が肝硬変への進行と関連していること、またその一方で、NK細胞の標的分子であるMICAの遺伝子多型が肝発癌と関連していることを明らかにしてきた。HCV感染によりMICA発現が誘導されるが、MICA遺伝子多型によりその発現量が異なり、その差が肝発癌リスクを規定していた。これらのことはすなわち、HCVと獲得免疫系との攻防がC型肝炎における肝病態の進展に、HCVとNK細胞を中心とした自然免疫系との攻防が肝発癌に深く関わっていることを示している。
GWASにて同定したこれらSNPはC型肝炎における肝硬変化・肝発癌のバイオマーカーとして個別化医療の遂行に有望のみならず、肝硬変化・肝発癌メカニズムの解明に有用である。また、MICA遺伝子を標的としたTRへの展開が期待される。
これら一連のゲノム解析から個別化医療、そしてTRへの展開の経験をnon-MDへの医学教育に応用することで、non-MDの臨床研究へのモチベーションの向上を促し、non-MDへの医療開発に関する教育を実践、ひいてはTRの基盤整備にまでつなげていきたい。

世話人: ○東條有伸(分子療法分野 教授)
長村文孝(先端医療開発推進分野 教授)