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膠原病の難治性病態の克服とステロイド療法の革新に向けた取組み

学友会セミナー

学友会セミナー:2012年11月12日

開催日時: 2012年11月12日 18:00-19:30
開催場所: 東京大学医科学研究所 2号館 2階 大講義室
講師: 田中 廣壽 博士
所属: 東京大学医科学研究所附属病院 アレルギー免疫科 准教授
演題: 膠原病の難治性病態の克服とステロイド療法の革新に向けた取組み
概要:

関節リウマチ(RA)の治療戦略は近年大きく変貌した。生物学的製剤導入による治療成績の向上は目覚ましく、早期からの強力な治療介入によって臨床的寛解と関節破壊の阻止が今や現実の目標である。当診療科においても完全寛解達成患者は年々増加している。
 その一方で、入院患者の多くを占めるRA以外の全身性自己免疫疾患(膠原病)の診療に関してはいまだに課題が多く、RAの状況とはまさに対照的である。膠原病患者の生命予後は総体的には向上しているが、死亡率が高く、または重い障害を残す難治性病態が認められる。また、キードラッグであるステロイドの副作用も未解決のままである。膠原病の長期生存例が増えるにつれてこのような難治性病態、ステロイドの副作用などの臨床的課題が一層クローズアップされている。
 混合性結合組織病などの膠原病に合併する肺高血圧症は右心肥大を経て右心不全に至るきわめて予後不良の病態である。私どもは、転写阻害分子として報告してきたRNA結合性核内タンパクHEXIM1が右心室リモデリングを抑制することを見いだした。心筋特異的にHEXIM1を発現するマウスは、肺動脈圧上昇時の右心肥大のみならず右心機能障害も軽かったことから、肺高血圧症の新たな治療標的分子として注目している。また、ステロイドに関しても新たな生理的役割を見いだしたとともに、その副作用発生の分子機構を解明しつつある。とくに、ステロイドによる骨格筋萎縮がステロイドのレセプターGRと栄養センサーmTORのクロストークの破綻によることを示し、その成果を踏まえた臨床試験も進行中である。本セミナーでは以上の私どもの研究成果を紹介するとともに、最後に、「副作用のないステロイド」の開発の現状についても触れ、今後の展望についても議論したい。

世話人: ○今井 浩三(附属病院病院長 特任教授)
 東條 有伸(分子療法分野 教授)