全身性リウマチ性疾患における自己抗体の病因的意義とその制御について
学友会セミナー
学友会セミナー:2012年10月30日
開催日時: | 2012年10月30日 18:00-19:30 |
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開催場所: | 東京大学医科学研究所 1号館 2階 セミナー室 |
講師: | 藤井 隆夫 博士 |
所属: | 京都大学大学院医学研究科 リウマチ性疾患制御学講座 |
演題: | 全身性リウマチ性疾患における自己抗体の病因的意義とその制御について |
概要: | 全身性エリテマトーデス(SLE)では疾患標識抗核抗体(マーカー抗体)の測定が診断や病型分類に重要であるが、その制御による疾患修飾は報告が少ない。抗DNA抗体はループス腎炎のマーカー抗体であるが、抗体除去のみでは腎炎を治療できず、自己反応性T細胞クローンを用いたワクチネーションでは限定的な効果にとどまる。したがってループス腎炎では多クローン性のT細胞や共刺激分子を含めた包括的制御が必要である。一方、臨床的に抗U1RNP抗体は肺高血圧症や中枢神経ループス(NPSLE)と相関する。われわれはNPSLE患者において、脳脊髄液(CSF)中の抗U1RNP抗体が高頻度に陽性となることを見いだした。抗U1RNP抗体-免疫複合体は、U1RNAがTLR7に認識される結果、樹状細胞におけるIFN-のinducerとして働くことが知られているが、CSF-抗U1RNP抗体はCSF-IFN-/MCP-1高値と相関していた。抗U1RNP抗体の病原性として、中枢神経系における自然免疫系の活性化が示唆される。SLEより高頻度に認められる関節リウマチ(RA)では抗シトルリン化蛋白抗体(ACPA)が疾患標識自己抗体であり、その産生はT細胞に依存する。生物学的製剤の導入により治療におけるunmet needsは著しく減少したが、今後RAを治癒に導くためには同抗体の制御を目的とした治療戦略が望まれる。 |
世話人: | ○東條 有伸(分子療法分野・教授)
今井 浩三(附属病院病院長・特任教授) |