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膠芽腫幹細胞 ~膠芽腫の治療の現状と研究の展望~GCOE特別セミナー(医科学教育セミナー)

学友会セミナー

学友会セミナー:2011年12月20日

開催日時: 2011年12月20日 14:30-15:30
開催場所: 2号館大講義室
講師: 秀 拓一郎
所属: 熊本大学 脳神経外科
演題: "膠芽腫幹細胞 ~膠芽腫の治療の現状と研究の展望~"GCOE特別セミナー(医科学教育セミナー)
概要:

脳組織はニューロンとグリア(アストロサイト、オリゴデンドロサイト)からなり、グリオーマはグリア細胞の特徴を持った脳腫瘍で、その中の最悪性のものが膠芽腫(glioblastoma multiforme : GBM)である。30年来の研究にもかかわらず、膠芽腫症例では術後に化学・放射線治療を追加しても平均生存期間は未だ1年足らずという現状であり、他の癌種に比べ、生存期間の十分な延長が得られていない。治療効果が得られていない原因としては、脳機能の維持のために切除範囲が制限されることや手術中に解剖学的なオリエンテーションがつきにくいことなどがあげられた。しかし、診断技術や手術技術の格段の進歩に拘わらず、未だ十分な延命効果は得られていないため、新たな治療法の開発が切望されている。
1997年の白血病幹細胞の報告に始まり、2003年に乳癌と脳腫瘍の幹細胞が報告され癌幹細胞研究は大きく動き出した。これまでの癌治療は癌組織全体、特に腫瘍の増大、分裂能を主な治療標的としていたが、分裂速度が遅く治療抵抗性の癌幹細胞は生き残り再発の原因となってきたと考えられ、膠芽腫においても幹細胞研究が精力的に行なわれてきている。   
我々は膠芽腫幹細胞研究の中で、ヒト脳腫瘍幹細胞がCD133分画に濃縮できること(Nature, 396-401, 2004)、またマウス神経幹細胞などへ癌遺伝子を導入して作成した膠芽腫幹細胞モデル細胞研究から治療標的としてのSox11の可能性(Cancer Res. 7953-7959, 2009)や、EGFR阻害剤とCox2阻害剤の併用が有効であること(Stem Cells, 590-599, 2011)を報告してきた。脳神経外科医として膠芽腫治療の現状と研究の展望について述べたい。

世話人: ○後藤 典子 (システム生命医科学技術開発共同研究ユニット)
東條 有伸    (分子療法分野)