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サイトカインによる免疫制御と疾患

学友会セミナー

学友会セミナー:2011年09月14日

開催日時: 2011年09月14日 17:30-19:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 1号館 1階 講堂
講師: 吉村 昭彦 先生
所属: 慶應義塾大学 医学部 微生物学免疫学教室
演題: サイトカインによる免疫制御と疾患
概要:

炎症性サイトカインにはマクロファージや樹状細胞から産生される自然免疫系のサイトカインとヘルパーT(Th)細胞から産生される獲得免疫系のサイトカインがあり、相互に密接に連携している。我々はサイトカインのシグナル制御がヘルパーT細胞の分化や機能を精密に制御し疾患と密接に関係することを遺伝子改変マウスを用いて証明して来た。特に最近注目されているインターロイキン17(IL-17)を産生するTh17の分化制御と疾患の関連について我々の成果の一端を報告したい。またサイトカインは免疫アレルギー疾患ばかりでなく、神経疾患、代謝疾患、循環器疾患、癌など多くの疾患と深い関係があることも次第に明らかにされつつある。我々はこれまでT細胞とは一見関係が少ないと思われてきた脳梗塞モデルにおいてサイトカインやT細胞の意義を明らかにした。すなわちマクロファージが産生するIL-23がγδT細胞を活性化してIL-17の産生を誘導し、これが梗塞層の拡大につながることを発見した。さらにマクロファージからIL-23の産生を誘導するToll-like-receptor(TLR)を活性化する脳内の候補因子を同定し、これを阻害することで梗塞層の拡大を軽減できることを示した。このようにサイトカインおよびサイトカインシグナルを制御することは疾患コントロールに有効である。すでに抗サイトカイン療法は関節リウマチや炎症性腸疾患など臨床で顕著な効果があることが確認されている。我々はサイトカインのシグナルを阻害するSOCS遺伝子やJAK阻害剤によってサイトカインの強度を調節することで関節炎やアトピー性皮膚炎モデルを抑制できることを示した。今後さらにモデル生物やシステムバイオロジーを活用し炎症性疾患の病因解明と治療法の開発を進めたい。

参考:Ichiyama et al. Transcription Factor Smad-Independent T Helper 17 Cell Induction by Transforming-Growth Factor-β Is Mediated by Suppression of Eomesodermin. Immunity. 2011 May 27;34(5):741-54.
Shichita et al. Pivotal role of cerebral interleukin-17-producing gammadeltaT cells in the delayed phase of ischemic brain injury. Nature Med. 2009 Aug;15(8):946-50.

世話人: ○井上 純一郎(分子発癌分野 教授) 
 三宅 健介(感染遺伝学分野 教授)