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分子スイッチとしてのmicroRNA‐クロマチン構造変換因子を制御するmicroRNAの解析

学友会セミナー

学友会セミナー:2011年01月12日

開催日時: 2011年01月12日 10:00-11:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 1号館 2階 セミナー室
講師: 櫻井 浩平
所属: 東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 宿主寄生体学分野
演題: 分子スイッチとしてのmicroRNA‐クロマチン構造変換因子を制御するmicroRNAの解析
概要:

クロマチン構造変換因子SWI/SNF複合体は、複数のサブユニットから構成され、様々な遺伝子の発現を正あるいは負に制御する。多くの細胞株で触媒サブユニットの一つであるBrmが活発に転写されるものの、転写後抑制を受けて発現が欠失することが知られている。このようなBrm発現欠失細胞では、レトロウイルスやHIVの持続的発現の抑制や、がんの増悪化が見られるが、Brm発現欠失の分子機構は不明であった。本研究ではHBV/HCV肝炎や様々ながん組織において発現異常を示すことが知られるmiR-199a-5pと-3pが、Brm mRNAを標的とし、その転写後抑制を担うことを示した。さらにmiR-199a-5pと-3pを産生する主なヒト遺伝子座であるmiR-199a-2遺伝子は、転写因子Egr1によって転写が活性化されること、またBrmはEgr1遺伝子のプロモーター上に動員され、その転写を抑制することが明らかとなった。一般に、miR-199a-5p,-3pとEgr1の発現が高いがん細胞株では、Brmの発現が低く、逆にmiR-199a-5p, -3pとEgr1の発現が低いがん細胞株では、Brmの発現が高い傾向があり、BrmとmiR-199a-5p,-3pが、Egr1を介してダブルネガティブフィードバックループを形成することが明らかになった。本セミナーでは、miR-199aが多くの遺伝子群の発現を変動させる分子スイッチとして機能し、種々の疾患の発症、進展に関与する可能性について議論したい。

世話人: ○三宅 健介(感染遺伝学分野 教授)
 伊庭 英夫(宿主寄生体学分野 教授)