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がん微小環境での悪性化制御因子としてのMT1-MMPの役割

学友会セミナー

学友会セミナー:2010年10月20日

開催日時: 2010年10月20日 17:30-18:30
開催場所: 東京大学医科学研究所 1号館2階 会議室
講師: 越川 直彦 博士
所属: 東京大学医科学研究所 癌・細胞増殖部門 腫瘍細胞社会学分野
演題: がん微小環境での悪性化制御因子としてのMT1-MMPの役割
概要:

 膜型マトリックス・メタロプロテアーゼ-1(MT1-MMP)はproMMP2の活性化因子として、また、自らが膜型のコラーゲナーゼとしてコラーゲンやラミニンなどの細胞外マトリックス(ECM)を分解することで、がん浸潤・転移、組織再生、創傷治癒、血管新生などの生理的、病理的に重要な現象に関与することが知られている。最近の研究から、ECM基質に加えて膜分子がMT1-MMPの基質となりうること、また、MT1-MMPは膜分子プロセシングを介してその機能調節に重要な役割を果たすことが明らかとなっている。そのため、膜上でのMT1-MMP複合体の全容を明らかにすることは、MT1-MMPの細胞機能制御における役割を見出すことを可能にする。越川博士らは、癌細胞の膜上でのMT1-MMP複合体構成蛋白質を、プロテオミクスの手法を用いて網羅的に解析した。その結果、MT1-MMPは既知の膜分子を含む50以上の膜分子と結合していることが明らかとなり、それらのうち50%の膜分子はMT1-MMPの新規基質分子であることが分かった。さらに、MT1-MMPによるこれら新規基質分子のプロセシングが細胞に及ぼす影響を詳細に解析しており、これまでに、これら基質分子のプロセシングを介してMT1-MMPが、細胞増殖、生死、接着、運動、造腫瘍能を制御すること見出している。本知見は、MT1-MMPは細胞膜上で複合体分子と共益して様々な細胞機能の制御に関与していることを示唆しているものであり、本セミナーでは、ECM分解性プロテアーゼとして知られているMT1-MMPが、細胞膜上の微小環境における細胞機能制御因子としての新たな役割を担う可能性を論じていただく。

世話人: 村上 善則 (人癌病因遺伝子分野 教授)
○山本 雅 (癌細胞シグナル分野 教授)