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MRI脳画像統計解析:精神疾患や正常者への応用

学友会セミナー

学友会セミナー:2010年08月24日

開催日時: 2010年08月24日 17:00-18:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 1号館2階 セミナー室
講師: 山田 晴耕 医学博士
所属: 帝京大学ちば総合医療センター 放射線科
演題: MRI脳画像統計解析:精神疾患や正常者への応用
概要:

磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging, MRI)は,核磁気共鳴現象を利用して生体の任意の断層像を得られる方法であり,X線コンピュータ断層画像法(computed tomography, CT)のような放射線被曝がないことのみならず,X線CTでは得られない拡散などの機能的情報を得ることが可能である。今日では,脳梗塞など中枢神経疾患を初めとして,体幹部や脊椎・関節などの診断に広く臨床応用されている。MR拡散テンソル画像法(diffusion tensor  imaging, DTI)は,観察座標系に依存せずに物質の拡散を評価するために考え出された数学的モデルに基づく手法であり,急性期脳梗塞などの診断において有用性が確立している拡散強調画像法の応用である。テンソル計算から導き出される代表的な値として,平均拡散能(mean diffusivity, MD)=見かけの拡散係数(apparent diffusion coefficient, ADC)と,拡散異方性の指標であるfractional anisotropy,FAがあり,後者はとくに白質線維の統合性の異常検出に鋭敏と考えられている。
 SPM(statistical parametric mapping, SPM)を代表とする脳画像統計解析法は,解析対象の固有脳を標準脳に投影することで,全脳のボクセル(画素)毎に統計解析を行う方法で,解析におけるバイアスが低く,仮説によらずに全脳の一度に解析することが可能である。単一光子放射断層撮影(single photon emission computed tomography, SPECT),ポジトロン断層法(positron emission tomography, PET),機能的MRI(functional MRI, fMRI)などの解析において当初用いられ,MRI体積測定に応用され(voxel-based morphometry, VBM),さらに上記のDTIへも応用されはじめている。
 統合失調症やうつ病など内因性の精神疾患は,脳腫瘍や脳血管障害とは異なり,脳の形態に大きな異常がなく,臨床における画像診断の役割は器質的疾患の除外が主体であるが,我々は上記のMRIの機能的情報に着目し,脳画像統計解析法により精神疾患患者脳の軽微な差異を検出しうることを示した。
 本セミナーでは,精神疾患患者や正常者の脳を対象としたVBMやDTIの脳画像統計解析法により得られた知見を紹介する。

世話人:   森本 幾夫(免疫病態分野 教授)
○今井 浩三(癌制御分野 教授)