English
Top

Gタンパク質を 標的とした新規制御分子の作用機構解明GCOE特別セミナー(医科学教育セミナー)

学友会セミナー

学友会セミナー:2010年08月09日

開催日時: 2010年08月09日 14:30-16:00
開催場所: 2号館2階 大会議室
講師: 伊東 広
所属: 奈良先端科学技術大学院大学・バイオサイエンス研究科・細胞内情報学講座
演題: "Gタンパク質を 標的とした新規制御分子の作用機構解明"GCOE特別セミナー(医科学教育セミナー)
概要:

Gタンパク質はホルモン、神経伝達物質など数多くの細胞外のシグナルが細胞内へ伝わる際に情報を伝達する分子として働く。α、β、γの3つのサブユニットからなるGタンパク質は、Gタンパク質共役受容体よってαサブユニットに結合しているGDPの解離が促進されGTPと結合することで活性型となり、下流へシグナルを伝える。
YM-254890は血小板の凝集を阻害する物質として奥多摩の土壌細菌より単離同定された分子量1000の環状デプシペプチドである。私共はYM-254890が約20種類存在するGタンパク質のうち3種類(Gq, G11, G14)にのみ作用し、Gタンパク質活性化の初期ステップであるGDPの遊離を阻害することを明らかにした。ついでYM-254890とGqからなる複合体のX線結晶構造解析に成功した。YM-254890はαサブユニットを構成する二つのドメイン(GTPase and Helical domains)と、それをつなぐリンカーの間のポケットに刺さっていた。YM-254890がリンカーに結合することでGタンパク質がGDP結合型の不活性状態に固定されスイッチがオンになることが妨げられていた。このポケットは全てのGタンパク質に存在するが、ポケットの形状が微妙に異なるためYM-254890の特異性が現れる。逆に他のGタンパク質のポケットにフィットする化合物のスクリーニングも可能となった。
Ric-8は線虫の遺伝学的解析より見出された新規Gタンパク質調節分子である。線虫、ショウジョウバエでは1種類のRic-8が存在し細胞の非対称分裂等に関与することが示されている。脊椎動物にはRic-8AとRic-8Bという2種類が存在するが、それぞれの機能は不明であった。私共は先にRic-8AがGqのGEFとして働き受容体の下流でシグナルを促進することを明らかにした。一方、Ric-8BはGsのユビキチン化を特異的に抑制することでGsタンパク質を安定化してGs/cAMPシグナル伝達系を正に制御していることを見出した。これまでGタンパク質シグナル系を調節する分子機構としてGタンパク質共役受容体やGAPとして働くRGSによる質的な制御系の解析が進んでいたが、今回初めて量的な制御機構の一端が明らかとなった。

世話人: ○後藤 典子 (システム生命医科学技術開発共同研究ユニット)
山本 雅 (癌細胞シグナル分野)